私はかなり偏狭な邦画好きで,洋画は,元々あまり観ないし,ブログにも書いたことはないのですが,この映画が,なかなか良かったことと,上映館が少なく,上映期間も短そうなため,観ることができない方にご紹介と言うことで

ただ,例によって完全ネタバレですので,自分で結末を確かめたい方は,読むのは,途中までにされた方が良いと思います。


 イギリスの片田舎,授業中の廊下で出会った二人の子供。

 ひとりは悪さが過ぎて廊下に出された悪ガキ,カーター,もうひとりは一切の娯楽を認めず,テレビの視聴すら認めない厳格なキリスト教徒の家庭に育ったため,テレビを使う授業中には廊下で自習するウィル。

 この2人が出会ったからと言って,すぐに友情が芽生えるわけもなく,ウィルは父親の形見の腕時計をあっという間にカーターに巻き上げられてしまう。

 カーターは裕福ではあるが家庭には恵まれず,年の離れた兄と二人暮らしである。
 兄はカーターをこき使っているが,カーターは必死に兄の歓心を買おうと振る舞う。ウィルの腕時計も兄への誕生日プレゼントになる。

 カーターは万引き,自転車泥棒など親がそばに居ないのをいいことにやりたい放題で,映画館にビデオカメラを持ち込んで,海賊版を作っては,母親が経営する老人ホームの老人達に売りつけたりもしている。

そう言えば,この映画の始まる前には例のカメラ男は出てきませんでしたね。

 カーターは少年を対象にした映画コンテストで優勝することを夢見て映画を作っているが,ウィルをだまして協力させようとする。

 ところが,カーターの家でたまたまダビング中だったランボーを見たウィルは,映画製作にノリノリになってしまい,だます必要などなく,カーターのむちゃな演出にも嬉々として従う。

 テレビすら見たことがなかったウィルにとって,ランボーの影響は絶大だったのだ。

 ランボーの息子が,敵に捕らわれたランボーを救出に向かうというのが彼らの考えたストーリーであるが,チビでひょろひょろのウィルが,ランボーと同じ格好をして走り回るのは可愛らしく,微笑ましい。

 この映画作りを通して,彼らの間に友情が芽生えていく。

$JUNO106のブログ


 ところが,撮影中に起きたフライングドック事件でカーターが1週間の停学になったことから,二人の気持ちが,ずれ始める。

 彼らが映画を作っていることを知った上級生の不良グループが,ウィルに自分たちも映画に出たいと言い出し,撮影に参加を始める。

 カーターが戻った時には,映画の内容もすっかり変わってしまっており,カーターはウィルに,これは俺たちの映画だぞ,と言うが,不良グループたちに監督として持ち上げられていたウィルは取り合わない。

 そして,ついにカーターと不良グループたちが衝突し,カーターは映画製作から追い出されてしまう。

 そのときウィルも不良グループといっしょになってカーターとその兄を罵り,ウィルが投げた石がカーターの顔面に当たる。顔から血を流しながら撮影現場を追われるカーター。胸が痛くなるシーンである。

 ところが,その直後,不良グループたちと撮影を再開したウィルは事故で廃油タンクに落ちるが,不良グループたちは,全員逃げ出してしまい,ウィルは死にそうになる。

 危機一髪のところを救ってくれたのは,カーターだったが,彼は,助けに来たわけじゃない,カメラを取り返しに来ただけだ,それから,俺のことはなんて言ってもかまわないが,兄さんのことだけは,絶対に悪く言うな。兄さんだけは,こんな俺といっしょに居てくれるんだ。と言う。
 廃油にまみれたウィルが,このときランボーに一番似ていたのは,とても皮肉なことだ。
 その直後,撮影現場の廃工場が崩れ,カーターは重傷を負って入院する。

 映画は頓挫し,カーターとウィルの友情は失われ,カーターはカメラを壊して兄を怒らせ,ウィルの家族は所属していた教会から破門されることになる。

 すべてが最悪のかたちで終わりを迎えようとする。

 だが,ウィルがカーターの兄を訪ねたとき彼が見ていたのは,兄さんだけは悪く言うなと怒鳴るカーターの映像だった。あのときカメラは回り続けていたのだ。
 ウィルはカーターの兄に頼みがあると言う。

 カーターは病院で,自分が作品を出すはずだった映画コンテストで見知らぬ少年が受賞しているのを見て落ち込む。

 だが,退院した彼が連れて行かれたのは自宅ではなく,街の映画館だった。

 そして,本編が始まる前に特別上映として始まったのは,彼らが撮った映画,「ランボーの息子」だった。

 チビでひょろひょろのウィルが演じるランボーの息子に場内は大うけで,不良グループたちの出演シーンは,彼らが味方を装った敵のスパイだったというように,巧みに編集されていた。
 そして,映画の最後に,カーターが撮った覚えのないシーンが加わっていた。
 ランボーの息子に襲いかかる案山子の怪物。
 倒された後に,最後に弟に伝えてくれと言って,被っていたバケツをはずすと,それはカーターの兄だった。
 「今まで,ほっておいて悪かった,これからはもっとそばに居るよ」そう言って,またバケツを被って死んだ振りをする案山子の怪物。

 一方,ウィルの母親は教会のあまりにも偏狭な考えに疑問を持ち,自ら教会を離れることを決意する。

 少年たちの友情の暖かさで,心の中に小さな灯りがともるような,映画である。