虚勢の虎の威を借るNHK会長 | 永田町異聞

虚勢の虎の威を借るNHK会長

慰安婦問題の放送は、安倍官邸の思し召ししだいなのだと、NHKの籾井勝人会長は平然として言う。安倍の下僕を自任しているのだろうか。

そのくせ、野党には虎の威を借りて横柄な態度をとる。俺は天下の三井物産で副社長だったんだ、一国の首相もついている。民主党の若造のくせに、無礼千万。そんな感じで、NHK会長としての適格性を問う階猛議員と、先日の会合でののしり合った。

籾井会長の心の支えは視聴者でも受信料でもない。後ろに控えて甲高く早口で吠えまくる虎だ。

もっともこの虎、人のヤジにはいちいち怒り、自分のヤジの品のなさには気づかない。総理大臣席で小さな相撲をとる虚勢の虎だ。

虚勢の虎とその下僕に忍従しているNHKの心ある職員は泣いているだろう。「恥ずかしい」「悔しい」「許せない」。数多くのOBたちが後輩たちから聞こえてくる声に、「やむにやまれぬ思い」で籾井会長の辞任、罷免を求める運動を繰り広げている。

NHK会長といえば、もともと政治権力に弱いことで知られている。というよりも、政治権力が会長を選んでいるのである。

政治部記者として、NHKと政治の裏面を見続けてきたOBの川崎泰資は語る。

「NHK会長を総理大臣が決めなかったことはただの一回もない。それを経営委員会が決めたことにして発表しているだけ。それほどインチキなんだ」

かつて7年半にわたり会長をつとめた海老沢勝二が安倍晋三、中川昭一の圧力で、慰安婦に関する番組内容の改変を現場に指示したことはよく知られている。

海老沢と同い年で、東大卒のエリートである川崎が、同じ政治部記者でありながら出世の道を閉ざされたのは、政治や組織の権力になびかなかったからにほかならない。

安倍首相は自らが関与した番組改変事件でNHK幹部の保身体質を見抜き、なめきっている。だから、自分の眼鏡にかなう新経営委員を送り込んでまで、松本正之前会長を退任に追い込み、籾井という報道オンチをその後任に据えるという荒業をやってのけたのだ。

一時は反乱を起こすかに見えたNHK生え抜きの理事や組合が、反抗したらいつでも首を切るかまえを見せるトップに対し、黙りこくってしまったのがもどかしい。

茶坊主のくせに威丈高。籾井が会長でいる限り受信料を払いたくない人の気分、よくわかる。