内閣記者会へ無言の抗議をした鳩山前首相 | 永田町異聞

内閣記者会へ無言の抗議をした鳩山前首相

菅内閣がスタートし、鳩山前首相は官邸を去った。


内閣記者会は、辞任記者会見に応じるよう繰り返し要請したが、鳩山首相は拒んだという。


これを、朝日新聞は一般記事 で「国民に背を向けて政権を去ることになった」となじり、 「天声人語」 では「辞め方も軽い」と皮肉った。


筆者は、内閣記者会への無言の抗議であるように感じる。


西山公隆記者はこう書く。


「朝日新聞の首相担当記者は7日、公邸から徒歩で昼食に出た鳩山首相に直接、会見を要請したが、首相は無言だった」


この一行の文から、鳩山前首相、担当記者、執筆する西山氏、それぞれの感情をくみとることができる。


内閣記者会には官邸報道室を通じ辞任会見を開かない旨、通知していた。「2日の両院議員総会で思いを述べ、記者のぶら下がり取材にも応じた」というのがその理由だ。


これについて、朝日は納得できなかった。


「病気などの例をのぞき、これまでほぼ全首相が辞任会見を行っており、極めて異例の対応だ」「議員総会は、身内の民主党議員が対象。自らの思いを一方的に述べただけで、質疑応答もなかった」(記事より)


辞任会見に応じない異例さが、どうやら不満のモトらしい。


キャップの指示を受けた首相担当記者が、公邸から徒歩で昼食に出た鳩山前首相に近づいて、会見を要請したが、無言のまま通り過ぎた。


その報告を聞いたキャップなり本社のデスクなりが、さらに不満や怒りを募らせたのか、それとも「一本、記事ができたな」と思ったのか。


そもそも、両院議員総会における気迫のこもった辞任表明演説で、十分、国民に鳩山氏の気持は伝わったと思うが、あれ以上、記者会見で何を聞きたいのだろう。


その答えは文中にある。


 「続投に意欲を示していたのに、なぜ急に翻意したのか」「実母から提供された巨額な資金の使途は何だったのか」


続投の意欲を示していたというより、辞めるべきかどうかの葛藤を必死で隠していたのを見抜けず、「あくまで強気」と報じていただけのことではなかったか。


これまで、さんざん聞いてきた実母からの資金の問題を、まだつつきまわしたいようでもある。


それでも、聞きたいのは自由である。今後、取材をすればいい。


慣例により、退陣にあたっては内閣記者会の会見要請に応じるべきだという。「我々は国民を代表して質問するのだ」という記者会のプライドがあるのなら、質問をもっと本質的な中身に変えるべきであり、それここそが国民に対するメディアの責任であろう。


筆者は、メディアの総攻撃を受け、あの苦しい心境のなか、両院議員総会で退陣を表明した鳩山の演説は一世一代の力をこめたものだと感じた。燃え尽きたと思う。


それを、さらに記者会見で、さまざま追及し、いったい国民のためにどんな発言を引き出したいというのだろう。


「天声人語」はこう書く。


今期限りの政界引退も表明している。資産家だから『晴遊雨読』で困るまい。だが、沖縄を混乱の中へ投げ込んだ普天間問題はこの先も続く。辞めても何一つ解決はしない、一議員、一個人としてどうかかわるのか。一言あってしかるべきだと思うのは小欄だけではあるまい。



政治家、とくに首相に甘えは禁物だ。辞任会見に応じるべきだというのは、ひょっとしたら正論なのかもしれない。


しかし、それでもなお、検察権力の乱用、官僚のサボタージュと意図的リーク、それに追従するマスメディアのバッシングを浴び続けた孤独な宰相の、一個人としての心の中を測るとき、これ以上追い討ちをかけることに価値があるとは思わない。


むしろ、鳩山首相の「辞め方が軽い」という「天声人語」の文章の軽さを筆者は深刻に受けとめる。単眼思考の執筆者に人間観のカケラも感じないからである。


一方、西山記者は記事の最後をこう締めくくった。


「国民が聞く耳を持たなくなった」と恨み節を残した鳩山首相は、会見を開くべきだとの要請には、「聞く耳」を持っていなかった。


あれは怨み節だろうか。悔恨のこもった言葉ではなかっただろうか。国民を怨んでいるのではない。自らを悔いているのだ。


ご面倒でしょう がワンクリック(1日1回)してください、ランキングが上って読む人が増えるそうです

  ↓↓↓↓↓

人気ブログランキングへ