米紙の軽妙コラムを重大視する日本メディアの深刻度
ワシントン・ポスト紙のコラム「in the loop」は、人間くさい政界裏話を面白可笑しく描いて、受けている。執筆者はアル・カーメン記者だ。
14日のコラムで、カーメン記者は「核保安サミット」に集まった各国首脳のうち、誰が勝者で、誰が敗者かを、ジョークをまじえて寸評した。
勝者はオバマ大統領と二国間の公式会談をさせてもらった人。そのうち「フー(胡錦濤)がトップだった」。
敗者は二国間の公式会談ができなかった人。そのうち、公式を求めて短い非公式しか応じてもらえなかったハトヤマは最大の敗者だという。
オバマ政権の関係者の「日に日にいかれている」というハトヤマ評を紹介したうえで次のように自説を展開。
「沖縄海兵隊基地の問題でハトヤマは信頼できないという印象をオバマ政権に与えている」
「なあ、ユキオ君、覚えてるかい、君の国は同盟国なんだよ、アメリカの核の傘のおかげで、巨額のカネを節約できてるじゃないか。トヨタ車も買ってあげてるだろ?」
最後に、こんなオチをつけている。
「サミットで鳩山に好意的だったのは誰だ? 」「フー(胡)だよ」
さて、この記事、日本人として怒っても、鳩山首相の押しの弱さを嘆いても、風刺画のようなものとして面白がっても、その他いろいろな読み方があっても、それはそれでいい。
ただ、この戯画的な記事を、さも深刻な日米関係の証左であるかのごとき報道が日本の大メディアでおこなわれていることは、より深刻である。
筆者がまず驚いたのは、昨夜9時のニュースウオッチ9で、トップニュースとして扱われたことだ。
はっきりと記憶しているわけではないがキャスターは次のような趣旨のコメントをしていたように思う。「新聞の一記事に過ぎないと思われるかもしれないが、ワシントン・ポストという米有力紙に酷評されたことは鳩山政権にとって打撃だ」
さて、それでは新聞はどうか。時事通信、産経新聞、読売新聞・・・。ざっと見ただけでも、複数の新聞が報道している。このうち産経の記事をそのまま下記に掲載する。
【ワシントン=佐々木類】米紙ワシントン・ポストは14日付で、核安全保障サミットで最大の敗者は日本の鳩山由紀夫首相だと報じた。最大の勝者は約1時間半にわたり首脳会談を行った中国の胡錦濤国家主席とした。鳩山首相について同紙は、「不運で愚かな日本の首相」と紹介。「鳩山首相はオバマ大統領に2度にわたり、米軍普天間飛行場問題で解決を約束したが、まったくあてにならない」とし、「鳩山さん、あなたは同盟国の首相ではなかったか。核の傘をお忘れか。その上で、まだトヨタを買えというのか。鳩山首相を相手にしたのは、胡主席だけだ」と皮肉った。
この産経記事を読むかぎりでは、ワシントン・ポスト紙のコラムの戯画的な軽妙さは伝わってこない。
むろん、ワシントン・ポスト紙が日本についての事実誤認が多いことは間違いない。
最近では、リー・ホックスタッダー記者が同紙社説で、9.11テロの解明を求める民主党の藤田幸久議員を「同盟国の外交政策エリート」と紹介したうえで、次のように書いた。
「9・11は巨大なでっちあげだと思っているようで、その見解はあまりに奇怪」「鳩山由紀夫首相が藤田議員のような無謀で事実に反する要員を自党内に許容するとなると、日米関係は深刻な試練を受ける」
鳩山論文批判以来、同紙が民主党政権に関するネガティブなネタに飛びつきやすい傾向があることも確かである。
ただ、ワシントン・ポスト紙を批判するより、その記事を日本メディアがどう報道するかという姿勢をここでは問題にしたい。
今回の場合、コラムの狙いや特徴まで含めて報道しなければ、間接的に記事の内容を知らされる側は正確にその内容を捉えることができないだろう。
ウソではないがウソになる。筆者がこの記事の最初に書いたコラムの内容と、例にあげた産経の記事を読み比べてみれば、同じではあるが必ずしも同じでないことがわかるだろう。薬味や調味料が入るかどうかのちょっとした差が、情報の味や印象を決めるのである。
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