高速無料化をめぐる議論、猪瀬氏は自己正当化に終始 | 永田町異聞

高速無料化をめぐる議論、猪瀬氏は自己正当化に終始

昨夜の報道ステーションで、民主党の高速道路無料化策について、議論が交わされた。


高速無料化発案者の山崎養世氏と、道路公団民営化を推進した現状維持派の猪瀬直樹氏が真っ向から激突するはずだったが、結局、時間切れで中途半端に終り、視聴者に物足りなさが残った。


こういう重要な議論には、いくら民放とはいえ、もっと時間をとってほしいものだ。あれでは、十分理解するのはむずかしい。


そこで、このブログで論点を整理してみることにした。


まず、旧道路公団から「独立行政法人・高速道路保有債務返済機構」に、いわゆる“飛ばし”で移された30兆円の債務をどう返済することになっているかを古館キャスターが説明した。


東日本高速など三つの会社の料金収入2兆円のうち、維持管理費の0.4兆円を除いた1.6兆円を毎年、リース料として機構に支払い、機構はそれを原資に今後41年かけて返済するスキームだという。むろん、猪瀬はこれを堅持する立場だ。


これについて、山崎氏は以下のように異議を唱える。


「首都高や阪神高速などを加えると35兆円の借金だが、そのうえにこれから20兆円新しい借金をして主に地方の、赤字が予想される高速を作る計画だ」


「つまり55兆円の借金を返さなければならないことになる。いまは1.5%ほどの超低金利だから返済が進んでいるが、70年代から93年くらいまでは金利は平均5%くらいだった。5%になると金利の返済だけで毎年3兆円になり、それでは返せない」


山崎氏は、超低金利のいまのうちに30年ものの国債を2%で発行し、借り換えをすれば金利コストが大幅に下がり、一般道路向けの財源の36%ほどを高速に振り向けることで、国債の返済や新規建設、メンテナンス費用がまかなえるという。


「地方では料金が高すぎて高速にそもそも乗れない。1キロ25円だから100キロで2500円。1時間で100キロ走り2500円取られる。時給2500円の仕事が地方にどれだけありますか。地方ではほとんど一般道路を使うから渋滞する。そこで、渋滞対策にまた新しい一般道路を作る。そういう無駄なものに毎年5000億円使っている」


ならば、高速道路無料化によってどのように変わるのか。山崎はこう続ける。


「現状は、高速道路ユーザーが支払う通行料金2.5兆円を借金返済に充て、高速を走る車のガソリン税など2兆円を一般道路建設に流用して、ユーザーに二重の負担を強いている。一般道路に流用しないで高速建設に充てていたら、とっくに無料になっていた。民主党案の高速無料化に必要な財源は1.3兆円で、これは2兆円のガソリン税等で賄える」


つまり、高速道路を一般道路と同じように開放すれば、新たな一般道路の建設を減らせるため、一般道路用の財源は、2兆円から1.3兆円を引いた0.7兆円もあれば十分だという考え方なのだろう。


対する猪瀬氏はまず、放漫経営の道路公団を民営化した意義を強調した。民間会社になって社員がやる気になっているという。しかし、なぜ、山崎の考えにまっすぐ斬り込まないのか不思議だ。


ややあって、ようやく以下のように反論らしきものを始めた。


「高速道路の年間収入は2兆円、直轄国道の年間予算は2兆円だ。高速の2兆円の収入が無くなって、税金を充てねばならなくなったら直轄国道の建設はどうするのか。財源を明らかにしなければならない」


山崎氏はすでに、それについて説明しているのだが、猪瀬氏が全く無視しているのも奇妙である。まともな議論を避け、ほとんど民営化の正当性を語り続けたのが猪瀬氏であり、残念ながらここに書くと論点がぼやけるので、割愛せざるを得ない。


そこで、山崎氏の話にもう少し耳を傾けることにする。山崎氏は高速無料化による「コスト増分野」と「コスト減分野」に分けて、次のように説明した。


「無料化で高速建設費と維持管理費あわせて9100億円が国費のコスト増になるが、渋滞対策の一般道路建設費4900億円や高速料金割引費用2500億円など計9900億円がコスト減になり、コストの面ではつりあっている」


さらに、無料化のメリットとして、山崎氏は経済効果による税収増加が見込める点を強調した。


「高速無料化による経済効果は国交省の試算で7兆8000億円あり、6000~7000億円の税収増になる」


そして、民営化会社が「借金は機構に付け替えているのに、土地だけはもらっている」とし、「簿価で安い数字になっているが時価にすれば巨額の資産だ。これを売るか、不動産会社にして上場すればいい。それこそが本当の民営化だ」と指摘した。


首都高や阪神高速をのぞく日本の高速道路を無料化する民主党のマニフェストに対し、渋滞がひどくなるとか、CO2排出量が増えるとかいった疑問符がつけられることが多いが、その点について、山崎氏は自身のHPで以下のように説明している。


「出入口の数がいまの4~5倍になり、料金所が消えた姿を思い浮かべましょう。(中略)渋滞の原因の30%は料金所にあるといわれます。いろいろな場所からノンストップで出入りできる高速道路なら、特定の場所を除いて渋滞は、いまよりもずっと緩和されるはずです」


「日本全体のCO2、NOxの排出量の1割程度は、交通渋滞が原因で発生している。つまり、アイドリング状態が環境には一番いけないわけですね。無料化は、渋滞原因の30%を占める料金所をなくすので、その分緩和されます」


高速道路無料化という民主党政策の意図するところは、山崎氏の説明でより明確になったと思う。だからこそ猪瀬氏には、山崎理論への明確なアンチテーゼを示してほしかった。


ただでさえ、猪瀬氏は道路公団民営化委員会の委員だった当時、小泉首相に国交大臣の座をねだり権力にすり寄ったと、評論家の櫻井よしこ氏らから指摘されているのだ。


いくら山崎理論が、道路公団民営化を否定するものとはいえ、民営化の苦労話や、今の職員が頑張っていることをあげて、猪瀬氏が我田引水の自己正当化に時間を割きすぎた感は否めない。


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