東国原知事、「権力のピエロ」になるなかれ | 永田町異聞

東国原知事、「権力のピエロ」になるなかれ

麻生首相が細田幹事長の首を切るという人事構想がメディアに流れている。選挙のため、舛添要一あたりにすげ替えるという噂も飛び交うが、こういうのを付け焼刃という。


細田は幹事長の器にあらず、とこのブログでも再三、書いてきた。選挙にはめっぽう詳しいが、行動よりも知識。いわば「選挙おたく」だ。


だから、古賀誠が選対委員長として好き勝手にふるまえる。古賀が、東国原知事ばかりか、橋下知事にも食指を動かし、入閣まで匂わせているという、少々怪しげな記事も産経新聞に掲載された。


民主党の羽田孜最高顧問が改革派首長の分断工作をしているという報道も、ちょっぴり胡散臭い。


この時期になると、メディアには思惑を秘めた様々な勢力の、誘導情報が寄せられるから、読む側はよほど注意が必要だ。


情報を得た記者は「字になる」と思えば、書くのが習性だ。つまり、紙面に載せてもらえる記事に仕立て上げられるかどうかが、情報判断の決め手となる。その影響まで責任を持つ記者は残念ながら少ない。


記者もまた「功名心」という欲に駆られ、「特オチ」という恐怖におののく生身の人間である。


それにしても、なにかとお騒がせの東国原知事。今日はもう彼のことにふれまいと思っていたが、またまた愚痴りたくなる発言をやらかしてくれたので、仕方がない。


宮崎・日南市で政治資金パーティーを開いた東国原知事が、講演の最後をこういう言葉で結んだそうだ。


「私が考えていること、それは、宮崎からどうやって総理大臣を出すかということです」


なるほど、それが彼の言う「地方分権」なのか。自分が総理大臣になって、宮崎を繁栄させる。パーティーの参加者のほとんどが宮崎県民だとはいえ、それはあまりのお言葉ではないか。


東国原が総理大臣になれば、「地方分権」ではなく「宮崎主権」にしますと、公言しているようにさえ、拡大解釈してしまうではないか。


もっとも、彼は知事として発言しているのであり、国家観、世界観の披瀝を求めるのは酷なことではある。


ただし、彼の唱える「地方分権」が、日本という国家、そこに生きる全国民のために必要だというアピールをもっとしていかないと、単なるローカル政治家が中央に色気を出しているとしか見られないだろう。


一昨年の末、福田政権に改革色を打ち出すため首相秘書官に起用された伊藤達也が、東国原に激しく突っ込みを入れる場面がテレビで放映された。一部を再現してみる。


宮崎に財源をよこせと主張する東国原に伊藤はこう噛みついた。


 「宮崎はまだ歳出削減の努力が足りない。守衛さんの給与が宮崎市は39.3万円、民間だと13.1万円だ。職員の給与も民間より2割高い。努力しないで、財源をくれと言ってもだめだ」


東国原は以下のように反論した。


 「この10年で10%人件費カットをしている。あと3年で本庁の職員を166人減らす。いままでも500人ほど減らしている。反対を押し切って出先機関の再編もする。それくらいやっている」


この10年の実績は、東国原がやったことではない。3年で166人減らすというので胸を張るというのも、なにやらおかしい。定年退職などでそれに近い自然減になるだろう。


伊藤はあきれたように切り返した。


「定員削減は、市町村の場合、今後4年間で全国平均で8%減らすことになっている。政令指定都市は9%以上だが、宮崎は4.6%しか減らしてない。職員の人件費を支えるために増税してくれと言っても国民に理解されない」


逆に言えば、中身はこのくらいだから、古賀誠は安心して「選挙用広告塔」という目的のために、東国原に甘言を弄することができる。


東国原が出馬の理由をつけやすいよう、マニフェストに地方分権推進の文言を織り込むことくらい朝飯前だろう。自民党のマニフェストがどんなにいい加減なものであるか、2007年の参院選のそれを引っ張り出せば一目瞭然だ。


年金を完全支給、天下りを根絶、医師不足を解消。どれ一つ、実現への道筋がいまだ見えない。何とでも書けるとタカをくくっているのだ。


総裁候補にするかどうか、という東国原の条件も、あえてハードルが高いように見せかけてはいるが、落としどころのヒントは東国原自らが示している。「あくまで候補ですからね」。


古賀の頭には、解散前の総裁選などないだろう。東京都議選で自民党が劣勢なのは分かっている。公明党が何と言おうと、その前に解散しなければ、麻生首相はもたない。


地方選とはいえ、激しい応援が裏目に出て敗軍の将のレッテルをはられ、「麻生おろし」で退陣に追い込まれるのは目に見えている。


先述したように、古賀にとって東国原は「広告塔」に過ぎないから、選挙が終わればご用済みだ。党内基盤のない東国原が実力者にのし上がっていく可能性はゼロにちかい。


選挙前には総裁候補OK、OKと言っていても、戦のあとは「総裁候補?そうぞ、ご自分で推薦人20人をお集めください」。それで終りである。


前倒しがなければ9月に行われる総裁選に、東国原が立つなどということはまずありえないし、下手をすれば、いずれ党内に埋没してテレビへの露出が激減することさえ考えられる。


東国原知事は、いまがチャンスと捉えているが、筆者はいまこそ危機と思っている。くれぐれも「権力のピエロ」に成り下がらないよう、熟慮をお願いしたい。増長の虫さえ抑えれば、魅力ある人材であることには変わりがないのだから。


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