胡散臭い「景気底打ち」宣言 | 永田町異聞

胡散臭い「景気底打ち」宣言

簡単に決めつけるなら「トヨタ救済策」とでもいえるだろう。さあ、政府補助金のつくエコカーいかがですか、という国策キャンペーンの受付が今日からはじまった。


トヨタはこの3月、連結決算で5600億円の赤字を出し、来年3月期で8500億円の赤字を見込む。


8500億円でとどまればまだしも、最上顧客だった米国人の浪費グセが消えうせて、貯蓄率だけうなぎのぼりとあっては、はなはだ来期予想も心もとない。


ならば、国内でプリウスを売りまくるしか手はないし、政府も日本のトップ企業を第二のGMにするわけにはいかない。


まことに必死さが伝わってくる、ありがたい施策なのだが、どうもわれわれ一般の商売人には、多少のおこぼれにあずかる気配もなく、ちょっぴり複雑な心境ではある。


さて、このほど政府の「景気底打ち宣言」と評される発表があったが、いったい、どこが底を打っているのか、本当にそう感じている方がいればお目にかかって、話をうかがいたい。


なんでも、「底打ち判断」の根拠は、在庫調整が進んで4月の鉱工業生産が前月比5.9%と56年ぶりの高い伸びとなったことだという。


あり余っていた在庫も、生産を大幅に減らせばいつかは掃ける。3月で調整がほぼ終わって、4月から本格的に工場を稼動させ始めたから、前月比でグーンと生産が伸びるのは当たり前で、前月までの落ち込みが異常だったというにすぎない。


基本的には、前年比が肝心なのだが、4月の前年同月比は生産、出荷ともにマイナス30.7%である。ちなみに、3月の前年比は生産がマイナス34.2%、出荷がマイナス32.4%だった。


前年比で見て、多少、マイナス幅が減ったとはいえ、「底打ち」と楽観視できるような数字だろうか。


三菱UFJの3月期決算は2569億円の赤字、不良債権は1兆1899億円。みずほフィナンシャルは3951億円の赤字で、不良債権は1兆3847億円にのぼる。経営改善は進まず、早晩、一部大手金融機関への公的資金注入も避けられない状況だ。


にもかかわらず、麻生政権がここで、あえて「底打ち宣言」をぶち上げねばならないのは、総選挙まで経済を実態よりよく見せかけなければならないという事情がある。


麻生政権の緊急経済対策が功を奏して1-3月期より、4-6月期に景気が好転したと見える数字だけを表に出し、「経済の麻生に偽りなし」の大宣伝をして選挙戦を展開したいというわけだ。


その実、街の景気はインフルエンザ騒動もあいまって、落ち込むばかり。270店舗が営業する大阪・梅田駅の巨大ショッピングセンターでは、5月の売上が前年を上回っているのはわずか二十数店舗に過ぎない。二割減、三割減の店が目立ち、消費不況の深刻さを物語っている。


リーマンショック以前から、政府は輸出頼みの好況の危うさに目をつぶり、内需、とくに個人消費を下支えする福祉や雇用の充実をおろそかにして、いつの間にか、この国の経済を見かけだけ立派な「砂上の楼閣」につくり変えてしまった。


その脆い土台が崩れ落ちかけているのに、株価だけはなぜか、アナリストとか呼ばれる専門家の商売用楽観論に乗せられて、何とかここまでは上昇してきた。麻生政権がなりふり構わず年金資金を投入して株を買い支えたともいわれている。


このまま景気も株価も上昇し続けてくれるのが望ましいし、個人的にもそう願いたいが、そうそううまくコトが運ぶとは思えない。


麻生政権が、選挙用に即効性ばかり考えて、大借金をしてカンフル剤的な経済政策を打ち、腐りかけた土台の修復をやらないものだから、次の政権はさぞかし苦労するだろう。


カンフル剤をやめ、根本治癒にとりかかったら、一時的には経済が悪化することも考えられる。


もし民主党政権が誕生して、秋以降の経済指標が悪化するようなことがあれば、「せっかく良くなりかけていたのに。やっぱり民主党では無理だ」と、自民党は、これ見よがしに吹聴できる。


ひょっとしたら、「景気底打ち宣言」は、そのための布石なのかもしれないと、意地悪な考えが頭をよぎる。


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