わざとらしい首相の「重点配分枠」予算 | 永田町異聞

わざとらしい首相の「重点配分枠」予算

予算編成で、こんな子供だましのような茶番をやってまで、麻生首相のリーダーシップを演出しなければならないのだろうか。


2009年度予算案の財務省原案より、わざわざ二日遅れで発表した別途3300億円の重点推進枠。見た目は、財務省原案の内示後に例年やっていた復活折衝をやめ、麻生首相自身の主導で配分を決めた体裁になっているが、実は、原案作成段階であらかじめ決まっていた内容だった。


つまり、各省庁や与党の要望を容れてほぼ決まっていた中身を、日程ををずらして発表しただけで、その間、麻生首相は別に配分額をひねり出すのに苦心惨憺する必要はなく、ひと言了解するだけでよかったのである。


重点推進枠の主な内訳は、社会保障775億円▽消費者庁・中小企業対策225億円▽地域活性化675億円▽食糧自給力向上630億円▽教育・研究開発705億円▽成長力・外交力強化290億円。


細目はあまりに多岐にわたるので書きようがない。いずれにせよ、各省庁の要望を網羅しており、本来なら財務省原案に盛り込まれるべきものを、後回しにしただけという印象が強い。


新方式の売りであるはずの「メリハリ」がさして感じられないなか、手厚い配慮が目立ったものをあげるとすれば社会保障費だろう。


医師確保、救急医療、非正規労働者就労支援、出産・子育て支援など、当然必要とする項目が並び、財務省原案に計上済みの基礎年金国庫負担割合引き上げ分などと合わせ、今年度予算より14%増加する。


一方、予算が5.2%減少したのが公共事業だが、最終的には1兆円規模の予備費で穴埋めするという見方が強い。


ここで、読んでいただきたいのが日経に載ったこの記事である。


 20日の財務省原案内示の前日、一部の与党議員らに回った説明資料には、載らないはずのデータが並んでいた。「公共事業費5.2%減」「中小企業対策費2.9%増」。本来は首相が重点配分した後でないと決まらないはずの数字だ。配分はほぼ資料どおりに決着。「官邸主導」が形ばかりであることを浮き彫りにした。


財務省原案ができたときには、重点枠の配分額についてもすでに各省庁と与党の話し合いがまとまっていたということだ。


21日に自民、公明の政調会長が中川財務相を訪ね、重点枠への65項目の要望書を手渡したのは、その翌日に披露される“麻生裁断”なるものを強調するための単なるセレモニーに過ぎない。


本気で、3300億円の重点枠予算に麻生色をつけるのなら、あれもこれもではなく、将来の国づくりに必要になる大きな財政支出に絞り、それを前倒しで断行することにこそ、意味があるのではないか。


医療や雇用など社会保障に必要な予算は原案の段階で当然、盛り込まれるべきものであって、重点枠で措置するのは、いかにもわざとらしい。


官邸は小細工を弄するのをやめ、難局であればあるほど堂々たる政治で道を切り開くことを考えたほうがいい。


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