財務官僚にバカ呼ばわりされる福田首相、敵は身内にあり | 永田町異聞

財務官僚にバカ呼ばわりされる福田首相、敵は身内にあり

名にし負う財務省の“代弁者”与謝野馨は相当ハラに据えかねていたのではないか。


13日のテレ朝「サンデープロジェクト」。田原総一朗が「党首討論を初めて面白いと思った」と切り出すと、与謝野は「面白くなかった。次元が低かった」とキッパリ否定し、こう続けた。


「総理がね、携帯片手にほうぼうに電話してね、これがいいのか悪いのかなんてやっているのは気の毒だ。官邸とか執行部とかが、きちんと条件整備をしないとだめだ」


官邸とか執行部、つまり、町村官房長官や伊吹幹事長がしっかり総理を支えないから、日銀総裁人事のようなドタバタが起きる、と言う。


そして「民主党のせいにしてはいけない。参院で少数になっていることを肌で理解していない。全ての政策を民主党と話しながら決めていく謙虚な姿勢がないといけない」と続ける。


与謝野は「かわいそうなくらいに苦労してる」というあの福田首相の嘆き節は、実は小沢一郎だけではなく、身内である官邸や自民党執行部に向けられたものだと示唆する。


福田は“派閥談合”のお膳立てによって出来上がった“心棒”なき政権を率いている。「偉大なるイエスマン」も、すご腕の腹心もいない。通産省上がりの町村官房長官、大蔵省OBの伊吹幹事長は二人とも、エリート意識だけ人一倍あるが、胆力もなく腹芸もできず、ただ押し付けがましい理屈をこねるだけだ。


しかし、与謝野発言の核心は、この二人に対する批判ではないだろう。実は、福田に「総理失格」の烙印を押していることを見落としてはならない。


財務省の傲慢な官僚達の間では、すでに福田首相のことを酒席で「バカ呼ばわり」している。日銀総裁の人事で、武藤敏郎が不同意になったあと、同じ元大蔵事務次官の田波耕治を提案した愚策に、財務省官僚たちは唖然とした。衆参ねじれ状況を認識し、早い時期から人事案の調整を与野党間で図っておけば、財務省の思惑通り武藤総裁が実現した可能性もあったのだ。


いずれにせよ、与謝野発言は、政治家への影響力の強い財務省筋の意向を示唆するとともに、「ポスト福田」にむけた動きが党内で本格的に始まることを予測させる。日銀人事やガソリン暫定税率で、民主党の思うがままにされた現実に、自民党はかつてない危機感を強めている。


内閣総辞職で、トップの顔をすげかえ、解散総選挙にのぞむというシナリオが現実味を帯びてきた。


とはいえ、福田首相はせめて7月の洞爺湖サミットまで、政権を維持したいはずだ。かつて父、福田赳夫は総裁選の敗北でサミット議長の大役を逃した。その悔しさを、秘書として間近に見ていた本人である。亡き父から引き継いだ思いを遂げたのち、党内で強くなりつつある「サミット花道論」を受け入れ、内閣総辞職するという選択肢はある。


その場合、すぐに辞めることが分かっている首相を議長にしてサミットを開催するというのも、いかがなものか。国際社会に対して、失礼なことではある。


半面、福田首相は酒席で「死なばもろとも」という言葉を口にすることがあるそうだ。解散権の行使という切り札をチラつかせて、いずれ退陣への圧力を強めてきそうな勢力を牽制しているとみられる。


窮地に立つ福田首相が打ち出した「道路特定財源の一般財源化」は、道路族への配慮を断ち切れないことによって、説得力を欠いている。これで民主党を政策協議に誘い込み、政権の再浮上をはかるという目論見は頓挫するだろう。


明日15日からは後期高齢者保険の年金天引きが始まる。具体的な数字が突きつけられたお年寄りの悲嘆の声がテレビ報道にあふれることだろう。福田内閣への風当たりはさらに強まることが予想される。

                            (敬称略)