PCI事件で浮かび上がる中国遺棄化学兵器処理事業の闇 | 永田町異聞

PCI事件で浮かび上がる中国遺棄化学兵器処理事業の闇

第二次大戦の敗戦による武装解除後、中国軍に渡したもの、棄てたもの、外国のものも含め、いま中国にあるすべての化学兵器は旧日本軍の「遺棄化学兵器」ということになっている。

「この廃棄処理は日本がやります」。中国政府の強い要請に応じてそう日本政府が決定したのは95年1月4日のことである。背後には、中国をジュネーブ軍縮会議に参加させるための西側の策謀があったとされる。ODA(政府開発援助)とは別に「日本からの資金」の流れをつくり、中国を納得させたのだという。

ときの総理は村山富市、外相は河野洋平である。中国共産党のおぼえめでたき方々であるのは周知の通り。河野が中国進出企業による「日本国際貿易促進協会」の会長であり、「北京オリンピックを支援する議員の会」の会長であることもすでにこのブログで取り上げた。

当初から遺棄化学兵器の回収・処理事業を、外務省から一手に受注してきたのは日本最大手のODAコンサルタント会社「PCI」である。今月23日、元社長、荒木民生ら4人が約1億2000万円の不正流用で東京地検特捜部に逮捕された特別背任容疑事件は、政府がらみの海外事業にまつわる権力と利権の闇の深さをうかがわせた。

PCIのODAにからむ不正経理は以前から取りざたされてきた。ODAとは政府が発展途上国に対して行う援助や出資のこと。もちろん、原資は国民の血税だ。PCIは各国の要人にワイロを渡して仕事をとるための裏金捻出を続けてきた。16カ国の事業で総額1億4000万円の不正が発覚し、外務省が計18ヶ月の指名停止処分にした経緯がある。

今回は、ODAではなく、日本政府発注の「中国遺棄化学兵器処理」に話を絞りたい。

戦後、残存化学兵器は国内では米軍に引き渡され、深さ1000メートル以上の海に投棄された。大陸では、ソ連軍や中国軍に渡したものと、報復や処罰を恐れて日本兵が棄てたたものがあるようだ。

中国吉林省ハルバ嶺。ここに大きな穴が掘られ、30万~40万発の化学兵器が積み上げられているという。中国側はこれを「日本軍の棄てたものだ」と主張する。その他、中国各地に散らばっているものを合わせ、70万発ほどの遺棄化学兵器があるとされる。

この途方もない数の化学兵器の回収・処理に日本政府はこれまで683億円を投入してきたが、まだまだ、作業は進んでいないという。今後、発掘回収施設と無害化処理施設の建設も必要で、中国の言いなりになって事業を進めれば1兆円の持ち出しを覚悟せねばならないという指摘もある。

2005年12月までPCIグループ会長だった丸岡文雄は自家菜園で農作業をしながら、今回の特別背任事件について、テレ朝のインタビューに答えた。「1億なんて、立小便ですよ。まあワイロですね。しかるべき人にワイロ出さないと仕事がとれないわけだから。無償援助にしろ、有償援助にしろね。税金、血税だから」。

ODAにせよ、政府の海外事業にせよ、ワイロ攻勢を当たり前としていたPCIの実態が、あっさりと暴露された。

国民の血税が投入される遺棄化学兵器処理やODA事業。それを受注して巨額な収益にありつくために、不正経理で捻出したカネをばらまいていく。そのワイロのための裏金も、もとはといえば税金だ。ここに、日本の有力政治家はからんでいないだろうか。

何回も、会計検査院から不正経理を指摘され、マスコミにも報じられてきた会社が、いつまでも政府がらみの海外事業に大きな顔をして参入できるのは、何らかの巨大な権力が介在していると考えねば説明がつかない。

95年1月4日の自社連立政権「村山・河野ライン」による“中国側要求丸呑み”は、今もなお戦争の“負債”を現代の日本人に背負わし続ける仕組みとなっている。

この事業に投じられる巨額の資金はほんとうに遺棄化学兵器処理だけに使われているのだろうか。なぜか、政府は事業費の詳細についての公表を渋り続けているのである。

国民の税金から拠出したカネの不透明な流れを一刻も早く明らかにする必要がある。

                          (敬称略)

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