ブッシュ in アルバニア | 永田町異聞

ブッシュ in アルバニア

「G8」の閉幕後、欧州訪問日程の終盤に、ブッシュ大統領はバルカン半島南西部に位置する小さな共和国を訪れた。反ブッシュデモの騒ぎがあったローマを離れ、その国、アルバニアの首都ティラナに着いたとたん、世界は一変した。

歓迎の横断幕、笑顔のブッシュ氏の巨大なポスター、そしてアメリカ国旗とともに沿道は美しい花々で飾られた。ブッシュ氏はあたかも国家の英雄のように市民の熱狂に迎えられたのだ。

バルカン半島の国を米国の大統領が訪問するのは初めてのこと。ティラナ在住のルフティ・ゼネリさんは興奮気味に言った。

「われわれのような小さな国にとってこれは画期的なこと。アメリカはコソボの独立を助けてくれるすばらしい国だ」。

コソボはセルビア共和国の自治州の一つ。セルビアからの独立を求めて紛争が起こり、2000年まで続いた内戦のあと国連の暫定統治下にあり、その独立問題がG8でも主要議題の一つとなった。

欧米や日本は独立に賛成、ロシアはこれに反対し、結論は出ないままに終わった。

コソボは人口約200万人のうち90%近くがアルバニア人で、セルビア人はわずか7%。アルバニア人はインド・ヨーロッパ語族、セルビア人はスラヴ系民族だ。

アルバニア人にとってコソボ独立は悲願なのである。アルバニア人がコソボに住むようになったのは紀元前1000年頃と言われている。
セルビア人がこの地域にやってきたのは7世紀頃と見られている。その後10世紀になってセルビア王国が成立。二つの民族が同一地域に共存するようになった。
セルビア人にとってはコソボこそセルビア王国発祥の「聖地」である。同じスラブ系のロシアがセルビア側につくのもうなずける。

このほか東欧では、チェコとポーランドへの米ミサイル防衛(MD)システム配備計画が、米国とロシアの「新たな冷戦」と呼ばれる緊張を生んでいる。

旧ユーゴの解体の過程で最後に残った紛争の火種、そしてMD配備をめぐる対立。いずれも、過去の亡霊のような争いごとである。
地球環境、気候変動、資源、食料といった人類共通の危機に直面していることを強く認識し、民族や国家の違いを乗り越えて互いに協力し、叡智を発揮しあうときが来ている。