コスタリカに学ぼう | 永田町異聞

コスタリカに学ぼう

「地球温暖化の元凶、CO2の排出を減らそうと思えば、コンビニの24時間営業をやめればいいんですよ」

フジテレビの報道番組で、環境問題の専門家が言った。僕は素直に「ほんと、その通り」と納得した。みんな、昔のように早寝早起きをするだけでエネルギー使用量は格段に減ってくるはずだ。自然の摂理に従うことが地球を救う。夜はみんな電気を消して寝ようじゃないですか。

カリブ海に面する豊かな大自然の国、コスタリカ。きれいな水と森林、生息する数多くの動植物。お金持ちとはいえないが、この国は21世紀型の「環境先進国」だ。

この国のアリアス大統領の名が久方ぶりにマスコミに登場した。今年6月、反共主義の観点から国交のなかった中国と国交樹立、同時に台湾と断交したのだ。

地元ラジオで「台湾の資金提供額が少なかったから乗り換えた」とはっきり説明する、ホンネの人である。中米和平合意成立(1987年)の功績によるノーベル平和賞受賞者にしてアルベルト・シュバイツァー人道賞の受賞者でもある。

この人をトップとするコスタリカがいかに先進的であるのか、「環境」で世界をリードすべき我々日本人はしっかりと見極め、参考にする必要がある。

まず、ユニークなことは Payment for Environmental Services 「環境サービスへの支払い」という仕組みである。環境サービスの市場を作ったのだ。

「森林を保護している持ち主に環境サービスを提供していることに対する支払いを始めた。新しいきれいな空気・水・美しい風景を提供している、そして生物多様性を保護していることに対する支払いを始めたのです」
 
環境エネルギー大臣はそう言って胸を張る。

「経済的利益がある方が罰則よりうまく行くのです。罰金などによる森林保護・生物多様性保護は、うまく機能しなかった。コスタリカは貧しい国ですが、オープンな国であると言える。また、環境保護の意思があるという面で、人的資源にも恵まれています。コスタリカ人は、環境の存在意義を確認しているのです」。

環境サービスとは、「二酸化炭素排出削減」、「生物多様性」、「水質」、「風景の良さ」といったことを指している。土壌や水質の汚染状況、森林の木の本数などを毎年測定し、環境が改善・維持されていた場合、地主に対し報奨金を与えている。それによって得られる金額は、木々を伐採して得られる収入よりも多いため、環境が維持されているのである。

国内収入の大半を観光事業が占めるこの国にとって、森林を維持し自然の美しさを保つことは集客力の向上につながる。実際、このシステムを導入したことにより、GDPが増加したといわれる。

コスタリカでは、国立公園を整備し、エコ・システムを保護し、森林破壊をストップさせることを目的として施策を展開。開発途上国の中で、初めて、伐採から植林に政策転換できた。この結果、かつて22%だった森林資源が、今では44%に回復、今後20年で70%をめざしている。

こうした政策を推進できたのは軍隊が廃止され、社会保障制度が整備されたことが大きいと、環境エネルギー相は言う。軍隊の廃止によって、軍隊に使うべき資金を教育にまわすことができるようになり、貧困撲滅にも役立った。かつて国民の50%が貧困であったが、今では20%まで下がっている。

地球温暖化、資源・食料ナショナリズムなどのリスクを抱え、人類に100年後があるのか、とさえ危惧される昨今、人間はこれまでの経済発展、開発至上主義という価値観を見直し、太陽、空気、豊かな緑・・・といった大自然の恵みへの感謝を「生きる価値」につなげていく必要がありそうだ。経済においても美しい地球を守ることが価値として認められる、そんな時代になっていかねば、本当に未来は暗い。