事故米転用追及に、農水省局長「甘かった」 | 永田町異聞

事故米転用追及に、農水省局長「甘かった」

金融危機、汚染米、年金記録改ざん・・・。テレビ画面から自民党総裁選の茶番劇を消し去るような、クライシスの波である。18日、汚染米や年金改ざんについて衆参両院で閉会中審査が開かれた。総選挙を前にしたこの時期に、政府・与党が野党の追及を受ける場を設けざるをえなかったのは、参院で野党が優勢である“ねじれ国会”の所産だろう。農水委員会に登場した政府側の主役は太田大臣ではなく、総合食料局長、町田勝弘だ。太田の言うことは意味不明瞭で話にならない。一方、町田はおどおどしながら、「甘かった」「不十分だった」と繰り返し、農水省の責任をほぼ認めた。この日の議論で鮮明になったのは、国民よりも関連企業の利益を優先する「共同体」意識が問題の根底にあるということだ。輸入検疫で汚染が分かったコメの返品や廃棄をしなかったのは、返品・廃棄にかかるコストを省きたいという商社の意向に沿ったものだ。政府の委託を受けミニマムアクセス米の輸入業務にあたる商社としては、そのまま国内に入れ、工業用に転用してでも売りさばくほうが利益が出る。農水省は相手国との間で、汚染米が出たときの返品等にかかわる経費をどちらが負担するかという話し合いをしておらず、当然、契約条項に盛り込まれていない。このため事実上、商社がコスト負担を押しつけられることになる。従って、その点をはっきりさせないでミニマムアクセス米輸入を進めてきた農水省の怠慢が最も罪深い。次に、国内の倉庫に山積みされていく事故米を少しでも早く処理したいとあせる農水省の事情がある。町田局長は「会計検査院から処理が遅いと指摘され、過去に購入実績のある会社に対して購入を促した」と語り、農政事務所を通じて業者に買取りを催促していた実態を示唆した。ミニマムアクセス米の輸入は1995年からはじまり、これまでに319万トンが輸入されている。そのうち事故米がどれだけあり、工業用として何トンをどういう業者に売ってきたのかというデータを農水省は提示していない。これまでのデータは全て5年前からのものである。95年から13年間にわたり、事故米の不正流用がおこなわれ続けていた可能性は否定できない。早急にデータを公開すべきであろう。工業用糊の原料とするコメの値段はキログラム当たり3円からせいぜい10円までが相場だという。ところが、三笠フーズは11円の高値で購入していた。これについて民主党の福山哲郎は「高くてもどうせ転用して儲けるのだからと農政局が思っていた証拠ではないか」と追及。「今思えば、高い。反省しています」と町田局長はうなだれた。昨年1月に内部告発があって以降、農水省は48回にわたり三笠フーズで立会い調査をしている。その調査内容があまりにも手ぬるい。あらかじめ打ち合わせして、事故米を工業用の米粉に加工するという日に調査日程を組んだうえ、ふだんは三笠にコメを販売する担当者が調査員に早替りして、午前10時から正午まで調査を実施。米粉に加工する現場を見学し、二重伝票の偽装されたほうをチェックして、毎回同じように「問題なし」の報告書を提出していた。「正午に調査が終わった後、昼食をご馳走になっているのではないか」との質問が飛び出すと、町田局長は「それも含めて調べているところです」と答弁した。もはやこれだけで、農水省の堕落が深刻であることは明白だ。出荷伝票を見て、出荷先に出向けば事故米がどのように使われているのか簡単にわかることだ。「共犯ではないのか」という野党議員の追及もうなずける。町田局長は「これまでは性善説でやってきた。甘かった。不十分な調査だった」としきりに反省の弁を述べるが、本当に責任を感じるのであれば、「甘かった」「不十分だった」ことの真の原因を明確に説明してもらいたい。                          (敬称略)*より多くの方に読んでいただくため、よろしければクリックをお願いします↓Blogbanner2_2人気ブログランキングへ