“汚染米テロ”を許した農水省の重罪
食の業界が汚染米に揺れている。食品関連各社のホームページには「弊社は三笠フーズと取引はありません」との緊急告知が目立つ。食のサブプライムショックに、疑心暗鬼は広がる。
それにしても、解せない。これは悪徳業者だけの問題なのか。農水省の根幹が腐っているのではないか。そう思わざるを得ない。
ウルグアイ・ラウンドによるコメの最低輸入義務(ミニマム・アクセス)で、日本が中国やタイなどから輸入しているのは年間70万~80万トン。うち、2000トンほどが残留農薬やカビ毒に汚染されているらしい。
ふつうの商取引なら、こんなコメは抗議した上で「返品」するのが常識だ。国家がからむとそうはいかないのだろうか。
農水省はただ黙って、「事故米穀」に分類して倉庫に保管。「工業用糊」の材料に限定という条件をつけながら、なぜか食品会社の「三笠フーズ」に売り続けてきた。
食品会社の販売ルートは当然、食品関連の業界だ。焼酎や米菓の材料として不正転売したから「違約金を請求する方針だ」と太田農水相はいうが、食品会社が工業用糊の材料を買い続けることに疑問を感じないとしたら、よほど間が抜けている。
ミニマム・アクセス米は国家間の貿易で輸入されるが、実際には商社など政府指定輸入業者が委託を受けて輸入業務を行う。
産経新聞の報道によると、住友商事が輸入業務を担当したタイ米の一部にカビが生えたため、事故米145トンを国から買い戻したさい、農水省が三笠フーズを紹介して転売を勧めていたという。農水省官僚と三笠フーズとの癒着ぶりがうかがえる話だ。
事故米を大量に買ってくれる便利な得意先として農水省が利用していたと考えられる。もし、農水省が三笠フーズに胡散臭さを感じながらも便利さゆえに取引を続けていたとしたら、その罪は重い。
ニセの伝票をめくるだけのチェックでよしとし、昨年1月、最初の内部告発を受けた立ち入り検査も、いい加減。「見逃したかったのではないか」と農水省そのものへの疑惑が浮かぶのもやむをえまい。
猛毒を含む事故米が酒や焼酎や米菓などに姿を変えて小売店に出回り、消費者の口に入る。それを知りながら販売を続けた業者の行為は「食品テロ」に近いものであり、それを厳しく監視する姿勢がなかった農水省は、いわば「ほう助罪」にあたる。
このさい、警察は食品衛生法違反容疑だけでなく、業者と農水省、農水族議員との間に金銭の授受がなかったかどうかも含めて、本格的な事件の捜査に乗り出してもらいたい。
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