橋下知事が蹴った「水都大阪」イベントとは | 永田町異聞

橋下知事が蹴った「水都大阪」イベントとは

今月9日、大阪市政記者クラブに「第6回水都大阪2009実行委員会の開催について」というプレスリリースの資料が配られた。中身は、16日午後2時から実行委員会を開催、午後3時から記者会見を行い、「水都大阪2009」実施計画などについて発表する、というものだった。

川・水辺・橋など、大阪の「水の回廊」に、アート作品を展開する“官製イベント”らしいが、6回目というわりに、浪速っ子にもほとんど知られていない。平松大阪市長が実行委員会の会長で、メンバーには経産省、国交省の近畿局トップや、大阪府知事、関経連など財界3団体の代表者らが名を連ねている。
   
16日の実行委員会はすでに固まった計画を承認するだけの、いわばセレモニーだと、ほとんどの出席者が思っていた。ところが、会議でどんでん返しのハプニングが起こった。大阪府の橋下知事が「イベント後に何が見えるのか分からない」と反対し、計画が白紙に戻ったのだ。
               
引き続き開かれた記者会見は平松、下妻、橋下と、イベントプロデューサーが出席したが、重苦しい雰囲気に包まれた。橋下知事は「イベントにかけるカネがあるなら、橋や護岸壁のライトアップなど景観整備を最優先すべきだ」と反対理由を述べ、平松市長は「驚いている。なんとか認めてほしい」と大慌て。下妻会長は「知事が反対したからといって何もいうことはない」と憮然たる表情だった。

さて、この「水都大阪2009」とは、どんなイベントなのか。基本計画によると、事業規模目標は連携するものを含め30億円。府、市、財界が負担する事業費総額は9億円で、府はうち1億4000万円を拠出することになっていた。

多忙な橋下知事が事業計画案を読んだのは実行委員会前日の15日だった。「何やこれ、こんなイベントに効果があるんか。もっとやるべきことがある」と、即座に反対を決意した。

橋下にそう判断させた計画案をもっと詳しく見てみよう。まずコンセプト。
「大阪の川と川辺を舞台に知恵と情熱を集め、新しい都市景観と産業と文化を生み出そう。市民と経済界、行政が一体となって水の都大阪を世界に向けて発信しよう」

コンサルに頼んで作らせたのかどうか知らないが、行政の計画案というのは大体、こういう仰々しく月並な表現になる。そうでないと、たいていの場合、お役人の頭の中ににバリケードがはられて、先に進めない。

次に、「要するに何をやるのか」ということを、18ページにおよぶ基本計画書のなかから、探し出し、まとめてみる。

開催期間は今年の夏から秋にかけての1~2ヶ月間で、場所は中之島公園・八軒家浜エリアと、堂島川、土佐堀川など5つの川、それに大阪城公園、上町台地をはじめ、大阪の町全体だという。恐ろしく長い期間、あきれるほど広い範囲で繰り広げられるのである。

そして、具体的なイベントの内容は、要らない文章を消去していくとしだいに明らかになってきた。どうやら、世界から集まったアーティストの作品を川辺に飾り、船でクルージングしながら景観を楽しもうということらしい。

無意味なこととは決して思わない。しかし、なにせ行政主導だとカネがかかって仕方がない。何億も使うのなら、一時に消費するイベントでなく、川辺の景観の固定的価値を高めるほうに使いたいという橋下知事の考えも分からぬではない。

それにしても、1~2ヶ月にわたり、大阪市内全体でやるというのはそもそも、どういう発想なのだろうか。場所と時間を集中させないかぎり、人は集まらず、多くの市民がイベントがあったことも知らないままに終わってしまうだろう。

この計画、今後どうなっていくのか分からないが、財政難にあえぐ大阪府市に住む人たちがほんとうに「喜ぶ」イベントかどうか、今一度よく考える必要はありそうだ。

                            (一部敬称略)