「私の男」


見本市の棚から
私はひとりの男を選び出し
その代価に
ぽきり と指を一本折って支払った


持ち帰る為に
慎重にパーツをひとつずつはずして
エコバッグに詰めて


誰にも見せないように小脇に抱え
駅の改札を通り抜けて電車に乗る


エコバッグの重さとやわらかい感触

少し湿り気を帯びた体温を
乳房の横に感じながら
つり革につかまって電車にゆられる


ガタンゴトン
ガタンゴトン


夜の窓の外に大きな蛍たちが行列を組んで
家路を急ぐ姿を見えるけど

どこか上の空で
バックの中身に想いをはせる


待ち遠しく
私の男のパーツを抱えて歩けば
明かりのない窓が
私を見下ろして迎える


ドアを開けて
私の男の為に明かりをつけて
ストーブをたくと

埃っぽい熱風が髪をなであげて
頬を乾燥させ足元をくすぐり

微熱めいた火照りが私の女を刺激する


じゅうぶんに暖まった明るい部屋で
エコバッグの口を開けて
パーツをひとつひとつ取り出して


元通りに組み立てて
説明書に書かれたとおりに
大事なところにくちづけて命をふきこめば


目を開けて
私だけを見つめる


その代価に
今度は小指を一本

ぽきり 

と、折って
その口に食べさせる



毎夜毎夜
私の男は私の身体を代価にして
私を見つめる


私の為に明かりをつけたまま
ストーブをつけたまま
家の戸棚で立ったまま私を待つ男

私を食べ続ける男



今夜もまた
私だけを見つめる私の男のもとへ
電車にゆられて家路をいそぐ








あとがき
多分2015年作です

内容的なこともあってはじめはアメンバー限定記事でしたが、公開記事にしたところ
かなりの反響があって自分でも驚いた詩です
今回再投稿にさいして、少し言葉の繋ぎと順番をいじりました

といってもほんの少しですが


タイトル及び書き方は友人からインピーションを得ました
感情を排して場景から浮かび上がらせるということは、それまでの私にはなかった部分です



今日は仕事が遅くなりますのでブログ訪問遅くなりますね

ではみなさま
よい一日を(^-^)