白いシャツのボタンをみっつはずした胸元から見えたのは女の胸でした
 
鏡に映った唇から漏れたのはため息だけで

「ほう」と
真夜中の梟も鳴いていました


バサバサバサッ
木々の梢を押し退けて夜を行く梟は
女を見ませんので
部屋の中ではひとりだけの目があったのです


そういえば
写真のあの人は笑っていましたね

「ほう」


梟のキーホルダーは覚えているでしょうかと
問う間すら
なかったのです


いいえ
ほんとうはありました

問わなかっただけ


そして伝言です
今年も姥桜は花をつけませんでした