「風呂にする飯にする?」
開け放たれてたリビングに入るとテーブルには所狭しと料理が並んでる。

「すっげこれ智が作ったの?」
「ナントカフリーじゃないけど」
「グルテンフリーな」

魚料理は……ある。
「あの…一応さ、帰るってLINEはしといたんだけど…ずっと返事なかったのはもしかしてこれ釣ってたとか」
「なわけないじゃん!てかそんなLINE来てないけど」
「えマジ?俺ちゃんと出る時…」
「松潤からのLINEは5分以内に返さないと怖いし来たらすぐ見るもん」
「それはネタだろ…ってうわやべ俺翔くんに送ってた!」
相当焦ってたんだな。やっちゃった超恥ずい!
既読ついてるし!むしろなんか返事ちょうだいよ!
ニヤニヤしてる翔くんが頭に浮かんで絶望的になった。
『智くんと仲直りしたんじゃーん♡』って絶対笑って放置してる。
あっおめでとうLINEすら来てないのもわざとか。

「ねぇとりあえずそんなのいいじゃん。もう誕生日終わっちゃうよ?」
「わっほんとだそうだ。ゴメンこんなにいっぱいありがとね。乾杯しよっか」
「あっちで食べよ?」
智はせっかくテーブルに並べてた料理を数品持つと小さなローテーブルの方に持っていく。
「?いいけど…」
「シャンパン。今日は僕が用意させてもらいました」
「はははっわざわざありがとうございます」
ソムリエみたいに背筋を伸ばして恭しくボトルを持ってくる。

細いグラスが満たされて…ぱちぱちと泡が弾ける。
そして智は先にソファにいた俺の隣に1ミリの隙間もないくらいぎゅうぎゅうに詰めて座った。

「ギリ間に合った。誕生日おめでとう」
「…ありがと」

そういえば昼から何にも食べてなかった。
きゅうっと胃が刺激されて熱くなる。
「ヤバいなこれ、今日はすぐ酔うな」
「いいじゃん明日休みでしょ?」
気の緩んだ智ってほんと可愛い。
俺って成長してないのかな。
好きな子ってどうしてもいじめたくなる。

「…あー…でも休みの日は朝からチャリでジムまで行ってトレーニングして、あとは録り溜めたテレビチェックして
SNSやったり英語勉強したりすんのがルーティンなの」
「へっ!?まさか明日もそれやる気なの?」
「当たり前じゃん」
ほら簡単に信じちゃって。
「俺は?俺は何してんのいる意味ある?」
「待っててよ」
「はいぃ?」
「待てるでしょ?今日もこれだけ待ってたし」
反論する気も失せてるのかぽかんと口を半開きにしてる。
………その顔も、実はスキ。

「いやいややっと一緒にいられるのにまだ待たせるとかどんだけ…」
「俺のこと、好きじゃん?」
「はぁぁ?」
「好きなら待てない?」
「待てないよ俺がどんだけ……」
「『どんだけ』、何?」
「………言わない。勝手にしろ」
あーあ拗ねちゃった。
一言聞きたかっただけなのに。

「俺は智が好きだから待っててほしいな」
「そのワケわかんない理論やめろ」
「なんで待てないのよ〜。もしかしてそんなに俺と一緒にいたいの?なんで?」
「知るかバカ」


もう。
誕生日くらい「好き」って言ってよ。