なんか俺今無敵。
ジムの適度な疲労感が心地いいし
なんならもうちょっと動きたいみたいな感じが午後の仕事へのやる気になってる。
何よりプライベートの充実感ての?
モヤモヤが晴れて超爽快。
今ならスポーツ飲料のCM、そこらの若い子より負けずに出来る気がする。
……ってそんな話はよくて。
さっきの電話の智、不満そうだったな。
声だけでどんな顔してるのかわかるよ。
からかうと面白いんだよなぁあの人。
「…ふっ」
思い出し笑いしちゃって少し離れた席にいたスタッフがパソコン越しにちらりとこっちを見た。
「大体揃った?」
ランチミーティングだから皆美味そうなケータリングの弁当を広げる中、俺は昨日食べ損ねたヘルシー弁当を取り出す。
「じゃあぼちぼち始めますか」
ここからほぼ休憩なしの打ち合わせ、18時までには終わらせないと。
………なのに16時アポの担当が来ない。
「あの、じゃあ先に映像の方細かい部分いいですか」
ここに合わせて他の予定組んでたのになんて無責任な…
「連絡ないの?」
「道混んでるみたいですね」
見越して来いよ。日曜だぞ。
「まぁこちらも強く言える立場ではないので…」
「周り日本人もいるんだろ?なんでこう、時間の感覚とか渋滞かもしれないとか細かいとこ気付けないんだよ…」
「すみません誕生日なのに」
愚痴っても仕方の無い相手に怒りをぶつけたこと、誕生日なんていう仕事には無関係なことを持ち込んでしまったことにハッとする。
「や…ゴメン。言ってもしょうがないよな」
「いえ…あのじゃあ先にこの映像見て比較してもらっていいですか」
全然無敵じゃない。
大人気もない。
目の前のことちゃんとやらないと。
プライベートに引っ張られすぎてるのは俺だ。
「連絡ありました、18時には来れるそうです」
映像の差し替えしてもらってる間に衣装のボタンを選んでいるとスタッフが入ってきた。
「18時?2時間遅れかよ…って今何時?」
「50分ですね」
「10分前じゃん連絡遅くね?てかウソまじ?ちょっと1本電話させて」
18時くらいに終わるって言っちゃったんだよな…
廊下に出て、人気のない階段を目指しながらさっきの着信履歴から折り返す。
『オカケニナッタ番号ハ…』
…………電源、切ってる?なんで?
「松本さん、来ますよ戻ってください!」
「あ、あぁゴメン」
それとも地下?いや今時地下も大概繋がるか。
なんだろ何してんだろ。
それこそサプライズ?
…なんてあの人そんなことしないか。