中国の裁判所が商船三井の船舶を差し押さえたが、これまで中国で戦時中の強制連行をでっち上げて日本企業を相手取って提訴してきたのと、今回は少し様子が違う。
これまでは、北京に近い河北省の高級人民法院への提訴や、これまた北京に近い山西省で元慰安婦が提訴。殆ど中国共産党が主導したものだと丸わかりである。
今回の実力行使は上海海事法院が日本の鉱石タンカーを差し押さえたもので、上海と言えば、人民解放軍の勢力範囲。
実力行使という点では、人民解放軍の息のかかった裁判所が北京政府に先駆けて行ったというところに、人民解放軍の鼻息の荒さが感じられる。
人民解放軍がタンカーを手に入れて軍事に転用したとしても、自衛隊にとっては全く大した影響は無いが、この動きは人民解放軍が共産党の配下にある位置から脱して、「共産党、頼むに足らず」と自分たちが中国の主人であるとの自覚に立ってやっているように見え、中国内部に大きな変化が起こる前兆といえるだろう。
軍人は、命が掛かっているだけに、リアリストでないと務まらないため、変な幻想を抱く事は少ない。
まともな軍人ならば、彼らが日米軍に勝てない事はよくわかっているので、安易に戦争になるような事はしない。
ところが、中国共産党は、「科学的発展観」という変な幻想を抱いていて、それによると「中国人は、世界を支配する素質を持っている」ということらしい。
「肉食動物が先天的に草食動物を襲い、草食動物は先天的に肉食動物に自らの肉を提供するようになっている。中国人は先天的に獲物を得る素質があり、日本人は先天的に中国人に自らを提供するようになっている」というトンデモ話を信じているのである。
海外のビジネスマンや政府高官が大気汚染を理由に相次いで上海を出て行っているので、PM2.5の対策をやろうともしない共産党政府は、上海閥に基盤を持つ人民解放軍にとって邪魔者以外の何ものでもない。
彼らが生き残るには共産党は駆逐するしか道が無いなと思っていたところで、上海閥の元大ボス・江沢民が人前に現れたというニュースが入ってきた。
やはり、人民解放軍の動きが活発化してきている現れだろう。何か企んでいそうだ。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成26(2014)年4月22日(火曜日)弐
通巻第4213号
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江沢民はまだ生きている。揚州痩西湖に一続郎党を率いて遊覧船
なぜこの時期に引退幹部が人前に現れるのか? 政治演出の狙いは?
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一時は死亡説が流れた江沢民(元国家主席)が王治坪夫人や一族郎党を率いて江蘇省揚州の痩西湖に現れ、豪華遊覧船を借り切って湖見物の物見遊山を行った。4月19日である。
その老残ぶり、警備陣のものものしさ。
http://china.dwnews.com/news/2014-04-20/59466199.html
江沢民は昨年の清明節前後にも生まれ故郷の揚州に現れ、カートに乗って市内を見学した。また冬場は温暖な海南島で過ごし、三月には広東省深せんを視察したことも報道された。江沢民は現在、上海の豪邸に住んでいる。
中国共産党王朝の不文律では引退した長老は公開の発言をしない、外国要人には会わない。海外渡航はしないのが原則とされるので、こうした行為は異例である。
しかし、先週には胡錦涛前主席が湖南省で胡耀邦の生家を訪れ、貴州省各地を視察したことが写真入りで伝わり、また温家宝前首相、李長春、呉邦国がそれぞれ山東省、河南省各地を視察したニュースが配信された。
ネットには批判、皮肉の投稿が溢れ「老残な犯罪者め」「いったい遊覧船の費用は誰が負担したのか。公務じゃないよね」「暗殺されたら良かった」などと過激な文言が並んだ。
なぜ、このタイミングで江沢民が公開の場に出現したか。周永康ら石油派が腐敗撲滅キャンペーンで追い詰められている、この時期に?
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