side.N



自宅マンションに帰って、ゲームの電源を入れて。
それからシャワーを浴びる。
首にかけたバスタオルで濡れた髪を拭きながら、冷蔵庫から缶ビールを手にして。
プルタブを開けると、プシッと気持ちの良い音を立てた。

缶に直接口をつけてグビグビと(おそらく)半分くらい一気に飲んでから、ドサッとソファーに腰をおろした。

ふ~・・・

時計を見ると23時過ぎ。
『日付が変わる前には着くよ』
そうLINEが来たのはついさっき。
明日は二人一緒の仕事で時間もゆっくりだから、久しぶりに夜を一緒に過ごす事が出来る。
俺も、あの人も忙しいから。
恋人として過ごせる夜は貴重だ。


『ニノ~、今日何かいいことあんの?』
昼間3時間ほど一緒に仕事だった相葉さんにそう言われてしまった事を思い出す。
『は?なんでよ』
『べっつにー、なぁんか嬉しそう?な感じ』
『いつもと変わんねーよ』
『あ!わかったー!!翔ちゃ』
『あー、うるさいっ』
付き合いの長いこいつには分かってしまうらしい。
自分ではいつもと同じようにしているつもりだったけど・・・
そうか。
分かるやつには分かるくらい顔が緩んでるのかも。
『じゃ~ね、ニノ。ほどほどに(笑)』
帰り際に相葉さんに言われた一言も思い出してちょっと赤くなる。

さっきシャワー浴びた時に準備をちゃんとした自分に、カァッと耳が熱くなった。

あ~、もうっ////

手にしていた缶ビールに再び口をつけてグビグビ飲み干して、片手でペコッと缶を潰した。

テレビをつけ、ニュースにチャンネルを合わせる。
あ。
翔ちゃんのお父さん・・・
ライブに来てた時に挨拶して以来だ。
実家に遊びに行った事もあった。
あの人の部屋はいつもメチャクチャで、メチャクチャなりのルールがあるって意味分かんない事言ってたっけ。
ふふ(笑)
あの時は、こんな関係になるなんて思いもしなかったけど。

ニュースでは都知事選がどうのってやってて。
すげー。
翔ちゃんは『普通のサラリーマンと変わんねぇよ』ってお父さんの事を言うけど。
どう考えたって普通じゃないでしょ。
官僚、都知事・・・。
いつか、ずっと先のいつか。
翔ちゃんもそうなるんだろうか。
嵐だって、ずっと今のままではないだろう。
形は変わっても嵐は嵐だろうけど。
でも・・・。
考えたって仕方ない事だって思う。
けれど。
いつか、翔ちゃんを手放さなきゃならない時が来たら・・・
俺は・・・


ソファーの上で両膝を立てて、小さく踞る。


翔ちゃんが好き。
だから、いつか言わなくちゃならない事はわかってる。


でも、まだ。
今は、まだ・・・。



ピンポーン!


インターホンの音にハッと顔を上げる。


ピンポーン、ピンポーン!


ゆっくり膝をおろして、首に掛けていたバスタオルで目元を拭う。
それから
フゥって息を吐き出してから立ち上がる。


インターホンのモニター越しに大好きなあの人の顔。
「はい」
『ただいま~』
「鍵持ってんだから、自分で開けてよ(笑)」
『はは(笑)』
そう笑って右手の人差し指で鼻をかく。
照れくさそうにして。
『だって好きな人に迎えられたいっしょ?』
って。
俺はちょっと泣きそうになる。
翔ちゃん、俺もあなたが大好きだよ。


「はいはい」
俺はそんな思いを隠してちょっと意地悪してそう答えてロックを解除した。

後2分もあれば、あの人はこの部屋に来るだろう。
バスルームにむかい、洗濯機に使ったバスタオルを放り込む。
それから鏡をみて・・・。
うん、大丈夫。


いつか、きっといつか。
その時がきたら、ちゃんと手離します。
だから、今は。
今だけは。
あの人とこうしていさせてください。


俺はそう自分に言い聞かせて、
フゥってもう一度呼吸を整えて。
それから。


「ただいま~!・・・あれ?カーズー?」


そう聞こえる玄関にむかった。