時が止まった2年から、生まれるものは何か | 碧い蒼い島暮らし

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奄美大島に移住してシーカヤックガイドをしながら、島の暮らしに七転び八起する生活ブログ

 奄美大島の私が住む節田(せった)集落は、それはそれは他の集落からも行事が多く大変だろうと言われるところだ。昔から農家が多く、古い踊りや唄が残されている。農家の人たちは働き者だ。嫁は節田にはやるな、嫁をもらうなら節田から、と言われたそうだ。そんな節田集落に14年前に移住したが、春から秋までまさに毎月のように伝統行事が大忙し。土日や祝日が主な仕事の私はしばしば集落行事には出られなかったものだ。いまとなっては懐かしい日々。

 

 

2018年8月 奄美まつりにて

 

 

大勢が集まって輪となり、一斉に唄い太鼓を叩き、昔からの唄をうたう八月踊り。満月に照らされる大きなガジュマルの樹木。海では船漕ぎ大会、運動会や相撲大会、余興に宴会...。人が人と会話し飲み交わし、大きな声で笑う時だ。近くにある高齢者の入所施設を回って踊ることもあるが、車椅子に座っている方々も昔ながらの踊りを聞くと手が勝手に動き出す。唄とともに、踊りとともに生きてきた人たちには、魂のようなものなのだろう。

 

2018年10月 種下し 味の郷かさりにて

 

先日、とうとう一年の最後の行事、町内一周駅伝大会も中止の知らせを受けた。区長になってもうすぐ半年。ほんとうに今年は最初から静まり返った年だったし、そうして締めくくるのだなと、しみじみ想った。

 

新型コロナウィルス、こんなにも世界を、全く違うものにしてしまうとは。誰が予想しただろうか。来年はどんな年になるだろうか。シーカヤックツアーも多くはストップし、たまたま天気と状況がよかった方だけ数人、海にお連れした年だった。

 

 

また集落に太鼓の音や唄が響くとき、世界はどうなっているだろう。海の旅で、お客様がすべて嫌なことを忘れたような笑顔になれる日が戻る頃、社会はどうなっているだろう。この止まった2年はどこへ向かう充電期間なのか。降り続く雨の音色とゲストの笑顔の写真は、しばし心をどこかへ連れて行ってくれる。