『でぃすぺる』

今村昌弘 著

(文藝春秋・2023年9月・図書館)

 

 

小学校最後の夏休みが終わった。小学校卒業まであと半年。

ユースケは、自分のオカルト趣味を壁新聞作りに注ぎ込むため、

”掲示係”に立候補する。

この地味で面倒だと思われている掲示係の人気は低い。

これで思う存分怖い話を壁新聞に書ける!・・・はずだったが、

なぜか学級委員長をやると思われたサツキも立候補する。

優等生のサツキが掲示係を選んだ理由は、去年亡くなった従姉のマリ姉にあった。

マリ姉は一年前の奥神祭りの前日、グラウンドの真ん中で死んでいた。

現場に凶器はなく、うっすらの積もった雪には第一発見者以外の

足跡は残されていたなかった。

犯人はまだ捕まっていない。

捜査が進展しない中、サツキはマリ姉の遺品のパソコンの中に

『奥郷町の七不思議』のファイルを見つける。

それは一見地元に伝わる怪談話を集めたもののようだったが、

どれも微妙に変更が加えられている。

しかも、『七不思議』のはずなのに六つしかない。

マリ姉がわざわざ『七不思議』を残したからには、そこに意味があるはず。

そう思ったサツキは掲示係になり『七不思議』の謎を解こうとする。

ユースケはオカルト好きの観点から謎を推理するが、

サツキはあくまでも現実的にマリ姉の意図を察しようとする。

その二人の推理を聞いて、三年目の掲示係であるミナが冷静にジャッジを下す・・・。

死の謎は『奥郷町の七不思議』に隠されているのか?

三人の”掲示係”が挑む小学校生活最後の謎。

こんな小学6年生でありたかった、という思いを掻き立てる傑作推理長編の誕生です。

 

 

デビュー作『屍人荘の殺人』でミステリ4冠を受賞された今村昌弘さんの昨年の作品、

YouTubeでどなたかが紹介されていたのをたまたま見かけたので

借りてみました。

 

小学生の男女3人が、一年前の殺人事件と、それにからめた地元の怪談の

謎を解くという話。

小学生がしっかりしすぎ~~~というのはありましたが、

とてもよく練れた作品でした。

ときには大人の力を借りながら、怪談の場所に実際に出向き、

そこに隠された謎を解くうちに、町の歴史の暗部にまでたどり着いてしまい、

あまりに人が多く死ぬので(過去も今も)もう止めて~と思うほど

怖くなってきました。

 

オカルトと現実のからませ方や小学生の日常の謎にもヒントが潜んでいるところ、

また、3人の友情などもすごくいいなと思いながら読みました。

 

ただ、結末にはもっとスッキリと、そうだったのかーーーという

納得感があればもっと良かったのにと思いました。