『モノ』

小野寺史宜 著

(実業之日本社・2024年8月・図書館)

 

 

モノレールに乗る人、モノレールを支える人。

一本のレールがつなぐ人間ドラマ

東京モノレールは何をやっている会社かわかりやすい。そのとおりだ。

浜松町と空港を結ぶ。お客さんを運ぶ。わかりやすい。

でも内側にはいろいろな仕事がある。

例えばぼくのような運転士がいて、杉本さんのような保守整備をおこなう人がいる。

駅員もいる。本社の人もいる。

モノレールを走らせる、という目的は同じだが、

それぞれにまったくちがう種類の仕事をしている。(本文より)

 

目次

清藤澄奈(きよとうすみな) 三十五歳 総務部

梅崎初巳(うめざきはつみ) 三十歳  運輸部、乗務区乗務員

水村波衣(みずむらなみい) 二十五歳 営業部、駅社員

杉本滋利(すぎもとしげとし)四十歳  技術部、施設区線路

『東京モノライフ』

 

 

小野寺史宜さんの最新刊。

この前『町なか番外地』を読んだばかりだと思ったらもう新作の出た小野寺さん、

何気に作品多いんですよね。

 

いつものように東京の地名に実際の固有名詞がたくさん出てくる作品でした。

 

帯に「お仕事小説の名手が贈る・・・」とあったので、

え?お仕事小説?そんなに多かった?と思ってしまいました。

わたしは小野寺さんといえば「まち小説」(そんな言葉あるのか知らんけど)

というイメージだったので。

そういえば『タクジョ』というタクシーの女性運転手がテーマの作品があったなと

思っていたら、その主人公・高間夏子さん、ちらっと登場。

他にも郵便屋さんのあの人とか、小野寺さん他作品とのリンクもたまにあるので

にんまりです。

 

さて、こちらの作品ですが、多分小野寺さんは東京モノレールさんに

かなり綿密な取材をされたんだろうなと思うくらい、仕事内容について

詳しく書かれていました。

あとがきでそのあたりのことは書かれていましたね。

さまざまな部署で働く4人の人のモノローグ(一人語り調)で描かれます。

日常の業務のこと、それぞれのバックボーンも描かれ、

少しずつ他の人とのからみもあります。

 

モノレールをはじめ、モノローグ、モノクロ、モノラル、

モノクローム、モノトーン、

モノには単一のとかシンプルとかという意味があるそうですが、

『東京モノライフ』というテレビドラマの撮影も入って、

4人がチョイ役で出演したりと、けっこう複雑で凝った構成になっています。

 

小説はもちろんフィクションですが、実際の場所と会社を舞台にした

これは、まさに「お仕事小説」でした。