『川崎警察真夏闇』
香納諒一 著
(徳間書店・2024年4月・図書館)
京阪運河沿いで死体があがった。身元は暴力団員の母親。
故郷の沖縄に里帰りし、当日、羽田空港に戻ってきたばかりだった。
発見現場に臨場した川崎警察署捜査係デカ長の車谷は、
軽バンから不審な荷物を下して走り去った二人組の男がいたことを聞きつけ、
全力で有力容疑者を追う。
だが、思わぬところで別の殺人事件が起きた。
被害者は沖縄の土地開発や経済交流に尽力する会社社長。
本土復帰を翌年に控えた沖縄を「鍵」にして、ふたつの事件が、
予期せぬ様相で絡み合っていく・・・
香納諒一さんの最新刊。
ひとことで言うと「ザ・昭和」でした。
舞台は沖縄返還の前年ですので昭和46年の川崎。
沖縄へ行くのにまだパスポートが必要だった時代に、
運河で下腹を裂かれた女性の遺体が見つかるところから始まります。
主人公の車谷刑事はいかにも武骨で強面の昭和のデカで、
捜査中は今ならコンプライアンス的に問題になるであろう、
多少の乱暴も辞さない。
ケータイはもちろん、防犯カメラもない時代、
倉庫街でドンパチがあったり、
車谷他数人の刑事たちのチームワークとか、
昔観た昭和の刑事ドラマの世界観を思い出しました。
沖縄の土地買収に絡む利権や人身売買の問題も絡めて
沖縄返還前夜の時代背景が切り取られた作品で、
昭和40年代はまだまだ戦争の名残を引きずっていたんだなと感じました。