『山の上の家事学校』
近藤史恵 著
(中央公論新社・2024年3月・図書館)
離婚して一年、荒んだ生活を送っていた幸彦は一念発起し、
山の上にある「学校」に通い始める。
そこには様々な事情を抱える生徒たちが通っていた__。
忙しすぎて”生活”が後回しになっている、大人たちへの応援歌!
近藤史恵さんの最新刊。
主人公の幸彦は43歳の新聞記者。
政治部記者として多忙な日々を送っていたある日、
突然妻から離婚をつきつけられ6歳の娘とも離ればなれに。
大阪に転勤になり、妹の勧めで大阪北部にある「男性だけの」家事学校に
通うことになります。
料理だけでなく、洗濯、繕い物、簡単なヘアアレンジまで
家事を教わっていくうちに、幸彦はこれまでの自分を見つめ直し、
また、さまざまな事情を抱えた男性たちと出会います。
幸彦が変わっていく様は良かったけど、
元奥さん、別れる時も一方的だったような気がするし、
もっと話し合えれば良かったのにとか思いました。
やり直せるチャンスはあるかもです。
校長先生の話す家事の定義はなるほどでした。
「家事とは、やらなければ生活の質が下がったり、
健康状態や社会生活に少しずつ問題が出たりするのに、
賃金が発生しない仕事、すべてのことを言います。
多くが自分自身や、家族が快適で健康に生きるための手助けをすることで、
しかし、賃金を発生する労働と比べて、軽視されやすい傾向にあります」
以前は専業主婦が多く、家事は女性の仕事というのが普通だったのかもしれませんが、
今は共働きも多くなりました。
夫婦の家事分担については年齢によってもまた個人によっても
考え方や価値観は様々だと思います。
作中にも「俺のこと好きならやってくれたらいいのに・・・」という
男性のセリフもありましたが、そのあたりの価値観のすり合わせとか
歩み寄りでうまく回っていくのでしょうね。
いい作品でした。