『鬼の哭く里』

中山七里 著

(光文社・2024年5月・図書館)

 

 

岡山県姫野村。人口300人にも満たないこの限界集落は、

令和の現在も70余年前の呪縛を恐れていた。

村人6人を惨殺した巌尾利兵衛の呪いにより、

数年に一度、村にある鬼哭山(おになきやま)から

利兵衛の咆哮が轟き、村人を殺すというのだ___。

新型コロナ感染症でパニックに陥る最中、

一人の男が東京から移住してきたことをきっかけに、

呪いの犠牲者と思しき死者が出てしまい・・・。

想像できない結末が読者を待つ本格伝奇推理!

 

 

相変わらず作品の多い中山七里さんの今年5月の作品です。

七里さんは新刊が出ると予約いれてしまいます。

 

今作は、紹介文を読んで、ん?岡山?横溝正史?とか

思いましたが、冒頭の1章だけが終戦直後で、あとは現在、

新型コロナが流行り始めた2020年が舞台です。

終戦直後、大地主から小作人となり次第に家が傾いた利兵衛は

起死回生を狙い種苗詐欺に遭います。

すべてを失い絶望した利兵衛は村人6人を惨殺、山に逃げ込みますが

ついにその姿は発見されないまま時は流れました。

 

そして現在、東京から移住者が来て直後、また犠牲者が出ます。

村人は祟りだとかコロナを持ち込んだとか、移住してきた男・麻宮を

攻撃対象とします。

 

こうした田舎を舞台にした作品というと、田舎の排他的とか閉鎖的とか

因習にとらわれ・・・といった設定になるのですが、

この作品の村人たち、することが排他的を通り越して子供じみていて

麻宮のスポーツカーに糞尿をかけたり傷をつけたり、家に投石したりと

言動があまりに幼稚に描かれていて、

田舎の人間として何だか馬鹿にされたようで、すごく嫌な気持ちになりました。

 

同じ中山七里さんの作品で、以前『ワルツを踊ろう』という作品を読みましたが、

都会から来た主人公が村八分にあうみたいな内容だったと思います。

こちらもすごく嫌な気持ちで読んだ記憶がありますが、それを思い出しました。

 

この作品では、村人たちはただただ余所者憎しで

理屈をつけて排除しようとしたり攻撃したり、

近所に住む中学生の裕也だけがまともな考え方をしているような・・・が・・・

 

わたしが田舎に住んでいるから過剰に反応するのか、

どうも田舎を舞台にした中山作品とは相性が悪いようです。