『彷徨う者たち』

中山七里 著

(NHK出版・2024年1月・図書館)

 

 

災害公営住宅への移転に伴い解体作業が進む仮設住宅の一室で

見つかった他殺体。

発見場所は出入り口がすべて施錠された完全密室、

被害者は町役場勤務の、仮設住民の担当者。

笘篠誠一郎刑事と蓮田将悟刑事は仮設住民と被害者との

トラブルの可能性を想定し、捜査にあたる。

そこで遭遇したのは、蓮田にとって忘れがたい決別した過去に関わる人物だった・・・。

 

復興が進む被災地に根ざす人々の間で激しく揺れ動く

心情と人間模様を描いた、著者渾身のヒューマンミステリー。

 

 

「宮城県警シリーズ」三部作の完結編にあたります。

 

前の「護られなかった者たちへ」は映画も観てよく覚えているのですが、

2作目の「境界線」は記憶がイマイチありません^^;

 

今回の謎は、犯人は?動機は?凶器は?と、あとは密室トリックということに

なるのでしょう。

 

捜査の過程で、刑事・蓮田は、幼馴染で仲の良かった3人の男女と再会します。

ケアマネージャーになっている知歌。

建設会社の2代目で県会議員の婿養子となり秘書もつとめる貢。

貢の妻で県会議員の娘・沙羅。

 

「腹違い4兄妹」と呼ばれるほど仲の良かった4人ですが、ある出来事を

きっかけに疎遠になっていました。

高校卒業以来14年ぶりに再会ますが、3人は南三陸町に残り、

家族や家を失っていますが、蓮田は仙台に引っ越したこともあり、

何一つ失っておらず、

それがひとつの「負い目」にもなっていました。

 

ネタバレになるのであまり詳しくは書けないのですが、

刑事としての職務、かつての友情と恋心、そしてさきほどの「負い目」

そういった感情が複雑に絡み合っていきます。

 

何とも重苦しさの残る作品でした。