『病は気から、死は薬から

 薬剤師・毒島花織の名推理』

塔山郁 著

(宝島社文庫・2022年9月・書店購入)

 

 

薬剤師の毒島さんに憧れる爽太の前に、

彼女の恩人だという男性・宇月が現れた。

薬のプロである毒島さんと漢方医学のプロである宇月は、

その知識でトラブルを鮮やかに解決していく。

記憶喪失の女性が高価な薬を捨てたのはなぜ?

悪質なマルチ商法をどう止める?

二人の親密さに焦る爽太。

そんななか、職場の先輩・馬場さんが、

有毒植物ばかりを育てる怪しい女性と婚約すると言い出し・・・・。

 

シリーズ第4弾です。

 

3つの話が描かれますが、まず、最初のお話。

「ここはどこ?私は誰?」状態の老女がホテルにやって来ます。

彼女の身元を調べるためにほうぼう手を尽くすのですが、

大金の入ったボストンバッグも持っており何やら犯罪の匂いも。

わたしは、ホテルの従業員がそこまでするのか、

警察に知らせて~と思いながら読んだのですが、違うのかな?

 

次はホテルの同僚女子のお母さんがサプリメントのマルチ商法に

はまってしまったかも、という相談。

ここで登場するのが毒島さんの知り合いの漢方医学のプロ・宇月さん。

漢方の知識で同僚のお母さんを助けます。

サプリメントは効果もあるけど、その反面もあるというくだり、

今、世間で話題になっている紅なんとかを思い出させてタイムリーでした。

 

最後の話は、職場の先輩でバツ2の中年男性・馬場さんが婚約するが、

その相手の女性は自宅の庭や温室に毒のある植物ばかり育てているという話。

持病に糖尿病がある馬場さんを心配する爽太たちでしたが、

この章でも宇月さんが活躍。

さらに、薬に興味を持つようになったきっかけで宇月さんの過去の出来事がわかります。

 

 

今回も薬に関するさまざまなウンチクに勉強になりました。

印象的だった言葉を挙げます。

 

  漢方薬は日本の薬であって中国の薬ではない

 

  西洋医学は病気を治し、漢方医学は病人を治す

 

  天然由来にこだわるあまり、大事なことを見落とせば

  逆に健康を害する恐れだってある

 

  『病は気から』の<気>とは気持ちではなく、漢方医学の<気>のことで、

   生命活動を維持するエネルギーを意味します。

 

  『この世に薬というものはない。すべてが毒であり、

   それを薬とするのは量の問題だ』

 

漢方、深いなー