『時ひらく』

アンソロジー

(文春文庫・2024年2月・図書館)

 

 

歴史あるデパート・三越を舞台に、人気作家6人が紡ぐ物語。

 

 

「思い出エレベーター」辻村深月

 制服の採寸に訪れて感じたある予感

 

「Have a nice day!」伊坂幸太郎

 ライオンに跨る必勝祈願の言い伝えを試して見えたもの

 

「雨上がりに」阿川佐和子

 老いた継母の買い物に付き合ってはぐれてしまった娘

 

「アニバーサリー」恩田陸

 命を宿した物たちが始めた会話

 

「七階から愛をこめて」柚木麻子

 友達とプレゼントを買いに訪れて繋がった時間

 

「重命る(かさなる)」

 亡くなった男が最後に買った土産

 

 

6編のアンソロジー短編集。

図書館の新刊案内の文庫カテゴリで見つけて、好きな作家さんばかり

だったので予約いれました。

予備知識なしに読んだのですが、みんな三越デパートをテーマにした

作品だったのですね。

そうか、だから表紙が三越の包装紙柄だったのか、でした。

ネットで調べたら、この柄は「華ひらく」という名前がついているのだとか、

だから「時ひらく」なんですね。

歴史のあるデパートらしく過去と現在を絡めたような作品も多く、

「時ひらく」というタイトルもうまいなーと感心しました。

 

そんな中、一番好きだったのは阿川さんの作品でした。

老いた母を買い物に連れて行くというシチュエーションからして

身につまされました。

今、わたしよく母のアッシーちゃんしていますので。

そして日頃の言動に「老い」を感じて不安になるというくだりが尚でした。

ラストはほっこりでした。

 

伊坂さんの作品、ライオン像に跨ると願いが叶うという言い伝えを

試そうとする女子中学生二人と協力する先生というシーンが

すごく良かったのですが、途中から変な方向に・・・

 

東野さんはタイトルからしてガリレオですね。

でも舞台は日本橋、ということは・・・やはり、あそこが出てきたのね、

と嬉しかったです。

東野さんの別シリーズですが。

 

さまざまなテーマで括られたアンソロジーがありますが、

ひとつの場所=デパートがテーマというのは珍しい気がして、

ファンタジーっぽい作品も多かったですが、

それぞれの作家さんの持ち味が楽しめて、とても良かったです。

実際の場所をご存知の方はもっと楽しめるかもです。