『有罪、とAIは告げた』

中山七里 著

(小学館・2024年2月・図書館)

 

 

東京地裁に勤める高遠寺円(こうえんじまどか)は、

中国製のAI裁判官<法神2号>のテスト運用を担当することに。

裁判のデータを入力すると、実際の判決文とほぼ同じものを

弾き出すという驚くべき精度だった。

多忙を極める裁判官にとってこれは大きな福音となる。

歓迎ムードが高まる中、円は一人それを受け入れられずにいた。

そんなとき、18歳少年による父親殺しが起きる。

裁判長は、<法神>にシミュレートさせると言うが___。

 

 

やたらと作品の多い中山七里さんの今年2月発売の作品です。

タイトルから、どこかSFっぽい気がしていたのですが、

いい意味で裏切られたというか、とても面白く、なおかつ

考えさせられる作品でした。

 

日本で20番目の女性判事・高遠寺静(『静おばあちゃんにおまかせ』

などの作品に登場の静おばあちゃん)の孫の円が、新人裁判官として登場というのも

嬉しかったです。

 

仕事に忙殺されている裁判官たちに代わって、AIが仕事を引き受けてくれたら

という、ありがたいお話。

(かの国ではほんとに実用化されているのでしょうか)

かなり精度が高いことがしめされますが、

場合によっては人の人生や生き死ににも関係してくることを

機械まかせにしてよいのか、

円は抵抗をおぼえますが、わたしも同感でした。

 

そんなとき起こった18歳少年による父親殺し。

父親の家庭内暴力に耐えていた少年が起こした事件は、情状酌量が

どの程度量刑に反映されるのか、尊属殺人による死刑かが争われます。

 

「尊属殺人」という言葉を初めて知ったのは、たしか中学生くらいのとき、

水谷豊さんがピアニストの役で出られていたドラマの赤いシリーズでした。

父親殺しの容疑をかけられた水谷さん演じる青年が「尊属殺人で死刑だ」と

何とか容疑を晴らそうとする話だったような。

昔のことはよく覚えているもんです。

その後、尊属という考え方が法の下の平等に反する、ということで

法律が変わったんだっけ、と思っていたら、そのあたりのことも

詳しく書かれていました。

 

近い将来、何でもAIにとってかわられるようになるのか、

それでも人間の心だけはなくならないようにと考えさせられる作品でした。