『鳥人王』
額賀澪 著
(光文社・2024年2月・図書館)
お笑いでは芽が出ず、身体能力ばかりが評価され、
番組の企画で棒高跳に挑戦することになった崖っぷちの芸人。
その番組を通じて共演するのは、パリ五輪が目標のいけ好かない
大学生アスリート。
出会うはずのなかった二人、それぞれの跳躍の先に広がる景色は___。
「不思議なんですよね。
漫才のコンテストで落ちたのは仕方ないって思ったのに、
棒高跳で負けて、悔しいって思うんだなって」
売れない芸人と五輪代表候補の大学生。
二人を繋ぐのは棒高跳だった。
額賀澪さんの最新刊。
額賀さんは駅伝をテーマにした「タスキメシ」シリーズも好きでした。
今回のテーマは棒高跳び。
陸上競技のなかでも一般人が一番マネのできにくい種目というイメージです。
お笑い芸人・御子柴陸は運動神経を生かしたスポーツに挑戦する番組で
レギュラーを持っているが芸人としては崖っぷち。
番組の企画は棒高跳びに挑戦しマスターズの大会で記録を狙い、
同時に五輪候補の大学生・犬養の五輪挑戦も追うというもの。
出会うはずのない二人が出会い、いつの間にか影響されあったのか
犬養はイケメンのうえにドラマのような生い立ちから
世間で作り上げたイメージを演じていたようなところがありますが、
突然キャラ変したのには驚きでした。
また、二人の他に国産ポールの開発を手掛ける、
元女子棒高跳び選手・翠の目線からも描かれます。
棒高跳びのポールが輸入品ばかりで値段が高くつき、
国産品はこれまでなかったというのは意外でした。
(日本には有名なスポーツ品メーカー、たくさんありますものね)
また、ずっと昔は日本は竹製のポールを使っていたので、オリンピックでも
上位に入っていたとか。
もう、へぇ~~~~でした。
何だかこれまであまり馴染みのなかった棒高跳びという種目のことが
たくさん知れて良かったです。
パリ五輪で注目して観そうです。
スポーツ小説の枠にとどまらず、それぞれの人生を絡めたのも良かったです。
「赤いきつね」と「緑のたぬき」って・・・フフフ