『午後のチャイムが鳴るまでは』

阿津川辰海 著

(実業之日本社・2023年9月・図書館)

 

 

九十九ケ丘(つくもがおか)高校の昼休み、

65分間に起こる出来事を描く学園ミステリ連作短編5編。

 

第1話 「RUN!ラーメン RUN!」

 昼休みの間に学校を抜け出しラーメンを食べて帰ってくるという

 完全犯罪を目論んだ2年生男子2人

 

第2話 「いつになったら入稿完了?」

 文化祭で販売する部誌の校了リミットが迫るなか、表紙イラストを

 担当する先輩が行方不明に

 

第3話 「賭博師は恋に舞う」

 マドンナへの告白の権利をかけて、「消しゴムポーカー」で

 勝負をする男子たち。

 

第4話 「占いの館へおいで」

 占い研究部の部室で聞こえた謎の言葉「星占いでも仕方がない。

 木曜日ならなおさらだ」の意味をあれこれ考える

 

第5話 「過去からの挑戦」

 今や学園七不思議となった17年前に屋上の天文台から消えた女子生徒の

 謎が今、明かされる

 

 

初読みの作家さんです。

読書系YouTubeの動画で紹介されていて、面白そうと思い読んでみました。

人の死なない日常系ミステリかつ学園ミステリ、どちらも好きなジャンルだったので。

 

65分というちょっと長めの昼休みのできごと。

ます第1話はフェンスの穴をくぐりラーメン屋へ走り、無料サービス券で

ラーメンを食べ時間内に帰ってくることを企む、という話。

ある意味バカバカしいけど真剣な彼らに笑ってしまいました。

第3話の同じクラスの男子13人が協力して消しゴムでポーカーをする話。

なぜ消しゴムなのかというと、トランプだと生活指導の先生に取り上げられてしまうので、

消しゴムにトランプの柄を手書きしケースに入れたものを使っています。

少し前に読んだ青崎有吾さんの『地雷グリコ』を思い出しました。

ややこしいので考えるのがめんどうになってきましたが、

イカサマの手口が色々あって面白かったです。

 

一見バラバラに思われた話が、最終第5話で一つにつながっていきます。

それまで張り巡らされていた何気ない伏線が回収されていくのが

お見事でした。

そしてある一人の人物が暗躍していたことが明かされ、つながりが

明確になります。

 

正直ちょっとわかりづらいところはありましたが、

(わたしの理解力?)明るく楽しい青春ミステリでした。