『団長とエース』

栗山圭介 著

(平凡社・2023年12月・図書館)

 

 

1983年、中京高校(現・中京大付属中京)で

怪物と呼ばれた投手・野中徹博と応援団長・東淳之介。

マウンドとアルプススタンドを通して、

ふたりの友情とプライドを描くドキュメンタリーを超える青春小説。

 

 

初読みの作家さんです。

お邪魔しているブログで紹介されていて、

スポーツ好き、野球好きとしては気になっておりましたが、

図書館のYAコーナーで見かけて読んでみました。

 

気になった理由は、どうやら実話らしい、ということもありまして、

「実話をもとにしたフィクション」だったようです。

池田の水野、享栄の藤王などの選手がライバルとして登場しますが、

「エース」野中は失礼ながら記憶にありませんでした。

 

「団長」東はヤクザの息子として育ち、野球は中学までで

高校ではひょんなことから応援団に入部します。

シゴキや体罰、他校との喧嘩と前半はちょっと暴力シーンも多く

気が滅入りましたが、昭和の不良はこんな感じなのかと思いながら読んでいました。

 

それでも東は応援団活動にのめりこみ、時代に応じて団内を改革し、

野中と知り合い、応援に力を入れるようになるところは良かったです。

 

特にドラマチックなことが起こるわけでなく、

野中と東の関係性も友情というにはさほど濃密なものでもなくあっさりしていて

かえってそれが実話らしくて良かったようにも思いました。

 

鳴り物入りでプロにはいっても活躍できずに消えていく選手はゴマンといます。

野中さんのその後も描かれますが、何度も戦力外になり、

台湾でも野球をし、他の仕事もして、また復帰して、プロ入り14年目で初勝利とか

粘り強く頑張った人だったのですね。