『野火、奔る(のび、はしる)』

あさのあつこ 著

(光文社・2023年10月・図書館)

 

 

小間物問屋「遠野屋」の主・清之介は、生国嵯波の紅花産業に

莫大な金を注ぎ込んできた。

その紅餅を積んだ船が突然消えた。

さらに奉公人のおちやにも騒動が起きる。

亡きおちやの伯父に代わって大店「八代屋」を継いだ長太郎が、

今頃になっておちやを無理矢理連れ戻そうとすることに、

北定町廻り同心・木暮信次郎と岡っ引き・伊佐治は不審に思う。

「遠野屋」に降りかかる不穏な動き、

清之介に纏わりつく血の臭い、底なしの闇。

ニヒルな同心・木暮信次郎。

元刺客の商人・遠野屋清之介。

尋常ならざる男と男がうねり合う・・・

 

 

弥勒シリーズ第12弾。

 

前作はたしか信次郎が行方不明になって、ほとんど出番がなかったのですが、

今回はたっぷりと出番がありました。

しかも、遠野屋を襲ったいくつかの不穏な出来事と、

街中で起こった殺人事件とのつながりを見事に解き明かしてみせます。

相変わらず、鋭いですね。

ところで、信次郎と清之助は惹きつけ合っているのか、反発し合っているのか、

今回もヒリヒリでした。

 

あと今回は、遠野屋の奉公人、おちやとおくみ、仲の良い二人の関係性が

良かったです。

大店の娘だったおちやと貧しい出自のおくみが、お互いを認め合っているところ

ほのぼのとしました。

 

ラストの終わり方、次にどんな続き方をするのか楽しみです。