『砂時計 警視庁強行犯係捜査日誌』

香納諒一 著

(徳間書店・2023年10月・図書館)

 

 

3編の中編警察小説

 

第一話「砂時計」

マンションの一室で三十八歳の女性が睡眠薬を服用して死亡。

遺書らしきプリントも見つかった。

警視庁捜査一課の大河内部長刑事は現場の不自然さに気づく。

パソコンからはメールが消去され、死の前日にスーパーの宅配サービスを

注文していることもわかった。

そして事件当夜には男女の言い争う声も聞かれていた。

女性は、高校時代の同級生の娘のために立ち上げた移植手術のための

募金活動に関わっていた。

だが、寄付金の管理に不正を指摘する声があり、

彼女のまわりには不穏な影が濃さをましていく・・・

 

第二話「日和見係長の休日」

警視庁捜査一課係長の小林豊は休日を浅草で家族とともに過ごしていた。

偶然、顔見知りの老女と出会い、「知り合いの私立探偵が身を投げ

自殺と判断されたが信じられないので調べてくれ」と言われる。

貴重な休日だったが、しぶしぶ調べを始めると・・・

 

第三話 「夢去りし街角」

目黒川に近い廃ビルで若い女性の死体が発見された。

当日は会社のお花見に参加しており、途中で抜けて学生時代の友人の

グループに参加したらしい。

かつて軽音サークルに所属していたそのグループは仲間が過労自殺したことで

裁判をしていたことがわかる・・・

 

 

香納諒一さんの最新刊。

 

捜査一課の同じ班が捜査する警察小説3編で、

長編並みの読み応えがある作品が3編もありお得な(?)作品集でした。

 

一話目と二話目がどちらも自殺と見せかけた殺人事件の真相を探る作品。

地道な捜査を重ねて真犯人に迫るという王道のストーリー。

二話目では休暇中の係長がいやいや事件を調べることになる展開が面白かったですが、

たまたま知り合った所轄の女性キャリア刑事と行動をともにし

認め合っていくところが良かったです。

 

どの作品も真犯人にたどり着くまで紆余曲折があり、

一筋縄ではいきませんでした。

 

でも、帯の「泣ける警察小説

だれもがオトコ泣き!」はちょっと煽り過ぎ・・・かな。

 

 

(追記)

直木賞が万城目学さんの『八月の御所グラウンド』

に決まりました!

おめでとうございます~お祝い