変わりのない日常は
幸せだけど退屈だ。
そんなことを思うとバチが当たりそうだけど…
会社員の夫、二人の娘の四人家族。
会社の同僚だった夫とは結婚してもう20数年。
人並み程度の小さないざこざはあるけど
真面目で特に趣味もない夫は概ね優しく
別段不満もない。
上の娘は大学卒業のあと職場近くで一人暮らし。
最近、彼氏が出来たらしく
あまり家に帰って来なくなった。
妹の方はまだ高校生。
進学校のわりには部活に熱心な学校で
バスケに夢中である。
私は結婚以来ずっと専業主婦。
子供達に手がかからなくなった頃から
お料理教室とかお花の教室など
習い事に勤しんだ。
陶芸教室にも通ったことがあり
その時の記憶で陶器の展示会とかを
覗くのが好きだった。
斎藤さんのギャラリーにはあれ以来行っていない。
たまにドレッサーの引き出しの中から
斎藤さんから貰った名刺を取り出し
名残惜しく眺めてしまう。
藍色の厚手の紙に
表に白抜きで名前だけが書いてある。
裏には知らない会社の名前があり
どうやら斎藤さんの仕事は
ギャラリーだけではないらしい。
でもそんなことはもうどうでもいい。
私には関係ないもの。
でもたまにあの古本屋の近くを通ると
気になってしまう自分もいる。
はぁ…
いったいどうしたのかな、私。
一目惚れしたのは自分でもわかっている。
でもこんなおばさんがあの斎藤さんのことを
こんなふうに考えること自体が…
もう異常だよね。
いっそ、何の気兼ねもなく
「また来ましたー!斎藤さん素敵だから^_^
目の保養にー」
なんて、あっけらかんと言っちゃえるくらい
図々しくなれたら楽なんだろうなぁ。
斎藤さん
今頃、何してるのかな。
また会いたいな…