サント=シャペルの模型を持つ聖王ルイ



伊勢型紙 おもしろ源氏物語図典 &ギャラリーあらくさ通信 クリックし拡大してご覧ください


伊勢型紙と和紙による作品(原画 『フランス大編年史』から抜粋の細密画部分、13世紀末~14世紀初め) 


猫式部でございます。制作者Nはただ今浮舟さまの作品に取りかかっているのでございますが、なかなか仕上がりません。そこで今日は趣を変えましてフランスのお話。


聖王ルイ(ルイ9世)とはどんな王様? フランスは花のパリ、尖塔とステンドグラスで有名なあの壮麗なサント=シャペルに行かれた方は多いのではないでしょうか。わたくしも昨年5月、制作者Nの付き添いで参りました。まず入場するのに長蛇の列、空港なみのきびしい荷物検査を受けましたわ。そのサント=シャペルを建立されたのが聖王ルイさまでございます。王は、キリスト受難の聖遺物類を財政難の東ローマ皇帝から購入し、それらを納めるために礼拝堂を建立されたのだそうでございます。その中にはキリストが受難を受けた時にかぶっていた『茨の冠」もあったそうでございます。とても敬虔なキリスト教徒の王の模範でいらっしゃるのです。


サント=シャペル 当地でもとめたガイドブックには次のように説明してあります。「まさに光の宝物、その多色の透明さで世界的に有名なサント=シャペルは、今日まるで石とガラスの宝石箱の如く現れる。訪れる人はその建築と装飾に賛嘆する・・・わたくしもあの色鮮やかな夢のような宝石箱の世界が忘れられません。


西洋物に挑戦して 伊勢型紙と和紙は日本のものですが、金色を多用した西洋画もなかなか制作するのに面白いとNは申しております。ステンドグラスなども伊勢型紙に合っているかも。


次回は、日頃のアクセスに感謝して、私家版の伊勢型紙による源氏物語絵巻の詩画集(頒価3000円)を送料340円のみにて贈呈のおしらせです。(いらない?そんなこと言わずに見るだけ見てくださいませ)






お前は鬼か、神か、狐か、木霊か・・・


伊勢型紙 おもしろ源氏物語図典 &ギャラリーあらくさ通信

伊勢型紙による作品 源氏物語 浮舟(原画「源氏物語 手習」 江戸 承応期)


猫式部でございます。東北大震災の被災地の皆さま心持ちの気高さ、強靭さに心打たれます。どんなにかお辛いことでしょう。またお亡くなりになられたたくさんの方々のご冥福を心よりお祈りいたします。


上の絵は、薫さま、匂宮(におうのみや)さまとの愛の板挟みに苦しまれた浮舟さまが宇治川に入水しようと川岸をさまよい、途中で正気を失って宇治院の裏手の木陰で気を失われていたところを横川僧都(よかわのそうず)さま一行に助けられる場面です。


なぜ浮舟さまは死を決意されたのか・・・浮舟さまと匂宮さまとの秘密を薫さまの知るところとなり、不実をなじる手紙が届きました。匂宮さまへの思い、薫さまを裏切った己への責め―浮舟さまは追い詰められました。

      なげきわび身をば棄つとも亡き影に

          うき名流さむことをこそ思へ  (生き恥をさらすより死んでしま

いたい。でも死んでもなお世間の物笑いになるのだわ)          


と絶望の淵に沈むのでした。おいたわしや。まだ22歳のお若さなのでございますよ。


宇治院にて 浮舟さまが発見された宇治院というお邸は、荒廃して狐や物の怪(もののけ)が潜むようなさびしいところでございます。横川僧都さまの母上さまと妹君は初瀬観音にお前利の帰途、母上が急病になられましたので、宇治院に宿るために、僧都さまとお弟子さまは前もって点検されていたのです。庭の奥の森かと思えるほどの大木の根元に、白いものが拡がっていました。一行はおっかなびっくり、松明の火でよく見ると、艶々した長い髪の女のようで、激しく泣いていらっしゃいます。


情け深い僧都さま  お弟子さまたちは狐が人間に化けたものだとか、得体の知れない不気味なものとかこんな穢れは災厄をもたらすとかいって反対をしますが、さすが高徳の誉れ高い横川僧都さま、「これは正真正銘の人である。目の前に失われようとしつつある生命をみすみす見捨てることはできないのだ」とおっしゃって浮舟さまの一命をお救いになったのでございます。


ああ、わたくし猫式部もどんなにか寿命が延びたことでございますことか。浮舟さまのその後の運命については次回に。

       
      

「薫の君はそれは穏やかで思慮深い方…」
伊勢型紙 おもしろ源氏物語図典 &ギャラリーあらくさ通信                                                                
伊勢型紙と和紙による「源氏物語絵巻 東屋二」 (原画 国宝「源氏物語絵巻」)

  

猫式部でございます。

このたびは巨大地震・大津波等により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。どんなにかお辛いことでございましょう。言語を絶する被害の大きさに、国民の誰もが胸の裂ける思いでございます。

でも復興の槌音が聞こえてまいりました。わたくしたちは一人ひとりが自分自身のこととしてこの国難に立ち向かい、一日も早い復興をなし遂げましょう。


さて今回は「形代(かたしろ)」の愛について。形代とは「人形(ひとがた)」とも申しまして、要するに`身代わり‘なのでございます。亡き人や別れた人にそっくり生き写しのため、その身代わりにするのですが、世間にはままあることですね。わたくしも離別した恋しい方にそっくりの人を見かけますと、心が動きますもの。


上の絵は亡き大君(おおいぎみ)を心に深く愛慕する薫の君が、大君そっくりの浮舟さまを訪れた場面です。


先回、浮舟さまは身を寄せられた中君(なかのきみ)の二条院で匂宮(におうのみや)に言い寄られました。浮舟さまの母君はそれは危ないと三条の隠れ家に浮舟さまを移されました。薫の君は弁の尼さまから浮舟さまの居所を聞き出し、案内を無理やり頼まれました

左下 打ち伏しているのが浮舟さま、そのよこで説得している弁の尼さま、あとは乳母(めのと)や女房です。簀子(すのこ=板敷きの縁側)に座って返事をお待ちの薫の君。秋雨がしとどに降り、庭には八重葎(やえむぐら)が茂っています。

浮舟さまは説得されます。薫の君は「長い間胸にしまっていたわが思いを聞いてもらいたい」と言われ、弁の尼さまは「薫の君は穏やかで思慮深い方、無理無体なふるまいなどなされない。ぜひお会いしなさいませ」と勧められます。浮舟さまは困惑して打ち伏していらっしゃいます。


結局薫の君は部屋に招じ入れられ、浮舟さまと一夜をともにされます。翌日薫の君は、浮舟さま、弁の尼さま、女房の侍従(じじゅう)さまと一緒に宇治へ向かわれます。浮舟さまの運命が大きく変わる第一歩でございました。

薫の君は「宇治でお見かけした時からあなたへの恋しさが募るばかりでしたよ」と浮舟さまにささやかれ、かわいらしくおっとりとした浮舟さまをいとしく思われ抱きとめていらっしゃいます。その一方で、宇治へ進む道々、亡き大君のことが鮮やかによみがえり心の中を占めていらっしゃるのです。浮舟さまは所詮大君さまの形代にすぎないのでございましょうか。その後の浮舟さまの運命の転変を思えば、浮舟さまが不憫でなりませぬ。(猫式部涙ぐむ)