白い扇と夕顔の花
$伊勢型紙 おもしろ源氏物語図典 &ギャラリーあらくさ通信   伊勢型紙と和紙による制作

猫式部ごあいさつ  お久しぶりでございます。随分ご無沙汰したしまいましたが、実はわたくし、制作者Nに付き添って、アメリカ旅行に行ってまいりました。ロサンゼルス、グランドキャニオン、セドナなど巡り、充実の旅でした。Nはお年のせいか 風邪をひいて10日間ぐずぐずと・・・あらごめん遊ばせ。言い訳でした。

絵の解説 白い扇と夕顔の花を背に夕顔の君は何を思っていらっしゃるのでしょう か。とても内気で頼りな げ、なよやかで夕顔の蔦のように男にまつわりつき、おおらかでものやわらかいかわいい 人。衣装の文様も白い扇に絡みつく夕顔の花でございます。夕方咲いて朝はつぼむはかない夕顔の花。その花の化身のような夕顔の君でございます。
源氏の君との出会い ある年の夏、源氏の君は六条御息所の許に通う途中、病気の乳母見舞いのため五条の家を訪れ その隣家の板塀を這う青やかな蔦草と白い夕顔の花に目がとまります。「一枝折ってまいれ」という 源氏の君に差し出された白い扇―香をたきしめ夕顔の花一輪を乗せ歌が書かれた。これが源氏の君17歳と夕顔の君19歳の運命的な出会いでした。源氏君は夕顔さまに心ひかれのめり込むように愛されます。お互い名前も身元を祕したまま。
某院(なにがしのいん)の一夜   もっとゆっくり二人だけの水入らずの時を過ごしたい―というのが源氏の君の願いでした。8月16日の夜、荒れ果てた広大な邸に夕顔の君を連れ出しますが、その翌晩閨の闇に現われたあやしいもののけ(源氏の君には六条御息所の生霊と思えた)に取り殺されてしまわれます。
夕顔の君の素姓  源氏の君が夕顔さまの素姓を腹心の惟光にひそかに探らせますと、頭中将の愛人で正妻の圧迫で隠れ住んでいること、娘が一人いて乳母に養われていることが分かりましたがその遺児こそ後の玉鬘(たまかずら)さま。何と人の縁は不思議に絡み合い繋がっていることでしょうか。短く、激しく、真剣に燃え上がった恋、そしてあまりにも哀切な結末、それだから一層源氏の君にとって夕顔の君は忘れえぬ人となったことでしょう。

   


哀切なり 六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)さま
href="http://stat.ameba.jp/user_images/20120601/00/arakusa/2a/08/j/o0724080012004008011.jpg">$伊勢型紙 おもしろ源氏物語図典 &ギャラリーあらくさ通信  伊勢型紙と和紙による制作
クリックし拡大してごらんください。

>猫式部コメント
 今回は六条御息所さまでございます。ようやく作品が完成しました。
六条御息所さまの存在感・・・源氏物語の女君の中で、抜群の存在感がおありです。このお方ほど女の業の深さ、女のかなしみを感じさせる人がありましょうか。老いたりといえ わたくしも女のはしくれ、御息所さまの心情を思いやるととても心が痛むのでございます。
源氏の君との出会いのふしあわせ・・・六条御息所さまは大臣の娘、16歳で東宮妃として入内され華々しい未来が開けるはずでしたが、4年後に東宮さまが他界されました。趣味教養高く美しく高貴な六条御息所さまの評判を聞いた源氏の君の熱意にほだされました。六条御息所さま24歳、源氏の君17歳。でもあまりにも完璧な女君に若い男君は息苦しさを感じられたのですねえ。

情炎の青(紫)い薔薇・六条御息所さま・・・イメージは青い薔薇。熱くまた冷たく燃え上がり、ついには加茂の斉院の御禊(ごけい)行列見物の折、車争いで屈辱を味わされた葵の上さまを生霊となって祟ります。また、荒れ果てた某院(なにがしのいん)で夕顔の君を取り殺した物の怪は、源氏の君の見たところ六条御息所さまでございました。六条御息所さまの情念の深さ、お悩みの救いがたさを物語るエピソードでございます。おいたわしや。

六条御息所さまの別れの決意・・・姫君が伊勢神宮の斎宮に定められ、御息所さまもご一緒に下向されることになりました。この際源氏の君との仲を清算しようと決意されたのでございます。さすがに源氏の君も別れを惜しまれて晩秋の野宮をお訪ねになり歌を交わしたりしみじみと語り合われます。野宮は斎宮が潔斎されるところで、皮のついたままの黒木の鳥居や、外回りの小柴垣などが一層別れの悲しみを深めるのでございます。御息所さま30歳、源氏の君23歳、斎宮様14歳の秋でございます。

出家の道を選ばれた浮舟さま
$伊勢型紙 おもしろ源氏物語図典 &ギャラリーあらくさ通信
クリックし拡大してご覧ください。

猫式部コメント  今回から「花の女君}シリーズと題して、源氏物語の女君とそのイメージする花をマッチングさせた作品をご紹介いたします。伊勢型紙と和紙で制作しました。
第1回は浮舟さまでございます。
 入水を図った浮舟さま・・・薫の君と匂宮さまお二人の愛の板ばさみに苦悩し宇治川に身を投げようとなさいます。
  なげきわび身をば棄つとも亡き影に
           うき名流さむことをこそ思へ
生きても死んでも世間の物笑いになるという絶望的な思い、しかし生き恥をさらすよりは、と死を決意された浮舟さま。宇治の院の奥深い大木の根元に倒れ伏す浮舟さまは、横川の僧都(よかわのそうず)さまに助けられます。おいたわしい浮舟さま。でも高徳のお方に助けられてほんとにようございました。
小野の家に引き取られる・・・浮舟さまは僧都さまの妹尼さまの家へ。妹尼さまは亡くなったわが娘の再来とばかり喜ばれそれは浮舟さまを慈しまれました。しかし浮舟さまの心は俗世を厭わしく思われます。
浮舟さま出家のいきさつ・・・妹尼さまがお留守にされる時があり、浮舟さまは僧都さまに頼まれてあの美しい黒髪をバッサリ、遂に出家の志を遂げられたのでございます。上の絵は、出家後 仏道修業と手習いに明け暮れる浮舟さまの姿でございます。浮舟さまは出家によって心の平安を得られたでしょうか。
行く方も知らぬ・・・浮舟さまの歌「心こそうき世の岸をはなるれど 行く方も知らぬあまのうき舟」。何というはかなく悲しい歌でしょう。年を取ったわたくしからみれば、若くて美しい方の心の闇の深さに胸を衝かれます。橋の向うに絶ち切ったはずの恩愛の絆のかげろうが。
花に例えれば・・・椿。美しく潔くはかなげ。
はかなげ。