幼なじみの妻 10年後


伊勢型紙 おもしろ源氏物語図典 &ギャラリーあらくさ通信

伊勢型紙と和紙で制作 「国宝 源氏物語絵巻―夕霧(部分)」


猫式部でございます。雲居雁(くもいのかり)さまは、名門中の名門―かつての頭中将さま、今は内大臣の姫君、明るくおおらかで それはお美しい方でいらっしゃいます。御母上は頭中将の君と離婚され、再婚なさいましたので、幼い雲居雁さまはご祖母の大宮さまに預けられそこでお育ちになりました。

 一方、源氏の君のご嫡男 夕霧さまはご生母の葵の上さまがお亡くなりになり、やはりご祖母の大宮さまのもとでお育ちになっていらして、そこでおいとこ同士のお二人は運命的な出会いをされたのでございますね。お二人は幼い恋をはぐくみ歳月が流れました 。

 こういうのを「筒井筒の恋」っていうのですってね。そういえばわたくしにもそこはかとない幼い恋がありましたっけ。でも大体においてこの恋ははかない思い出と残るものですよね。

 でも!いろいろ紆余曲折あったけど、お二人は雲居雁さま20歳 夕霧さま18歳のとき結ばれたのでございます。なんとおめでたく、お幸せで、また源氏物語ではめずらしいお話でしょう。

 10年後、お二人は5人の男君と2人の女君に恵まれた子だくさん。雲居雁さまは子育てで大変でしたよね。豊かな胸をはだけておっぱいを飲ませている絵巻もございます。小さな子どもの世話で忙しく、お化粧も夕霧さまにもあまりかまっておられません。

 そんな時、あろうことか夕霧さまが落葉宮(おちばのみや)さま―亡き柏木さまの奥さま―に心を奪われ、上の絵のような場面が展開するのでございます。夫の浮気を疑った雲居雁さまは夫に来た手紙を背後から忍び寄って奪おうとなさいます。この後夕霧さまは落葉宮さまと強引にちぎられ、お二人の間には争いが絶えず、ついには雲居雁さまを鬼呼ばわりになさいます。いろいろ出入りがありまして、結局夕霧さまは雲居雁さまと落葉宮さまのお宅を月の半分の15日ずつお通いになるのでございますが・・・。

 紫の上さまは、落葉宮さまのことをお聞きになって、ご自分の来し方・行く末を思い出しになり「女ばかり、身をもてなすさまも、所せう、あはれなるべきものはなし」とおしゃられました。わたくしはこの歳まで独り身で過ごしたのはよかったかなあ、なんて強がっておりますの。

 次は、やはり若く美しい女性・玉鬘(たまかずら)の君と結婚してしまう髯黒(ひげくろ)の君北の方をご紹介いたします。