春のエギングが、苦手である。
秋のアオリイカはエギへの反応が良く、極端に言えば、「そこにいれば釣れる」。
だから2〜3投して反応がなければ、そこにはいないと諦めて、サクッと次の場所を探ることができる。
いわば、「動の釣り」である。
対して春のエギングは、「静の釣り」である。
産卵のために接岸するアオリイカを狙うことになるので、やみくもに投げても釣れるわけではない。
接岸のタイミングや潮の動きを読んで、ここぞというポイントでイカを待つようなスタイルなのである。
それでいて、高確率で釣れるというわけでもない。
気の遠くなるような忍耐の先に、何も待っていないことが度々あったりする。
ワタシはこの、「待つ」というのが苦手で、これまでどうしても春のエギングは敬遠しがちであった。
おっさんのくせに、落ち着きがないのである。
しかし今年、三河湾のアオリイカが過去に例を見ないくらい好調であることに刺激を受け、いよいよ苦手な「静の釣り」を実践しなければならないようである。
忍耐の男となることを決めたワタシが向かったのは、
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240605/11/arakojp/c0/ef/j/o1080069215447686944.jpg?caw=800)
30分経過。
反応はない。
60分経過。
反応はない。
いつものワタシなら、ここであっさりポイントを移動しているだろう。
しかし、今日のワタシは違う。
今日のワタシは、忍耐の男なのである。
すると、30㍍ほど離れた場所で釣っていたお兄ちゃんに、ヒットが!
おぉ!
時合に突入か!?
さらに、そのお兄ちゃんの友人にもヒットが!
アツい!!
早る気持ちを抑えて、ひたすら自分のロッドに意識を集中する。
まだだ・・・
まだまだ・・・
まだまだ・・・・・・
次の、瞬間。
ドスンという鈍い重みをロッドが受け止めたかと思うと、同時に、不穏な音を立てながらラインが沖へと走る。
弓なりに曲がったロッドに、力強い生命力がビシビシと伝わる。
キター!!!
かなりデカそう!
ラインが次々と引き出され、リールのドラグがチリチリと唸りを上げる。
前回逃したキロアップ(推定)よりも、さらに大きそうな手応えである。
慎重にやり取りを続け、なんとか足元まで寄せてくると、イカの全容が明らかになる。
明らかに、キロアップ。
やばい、この大きさでは抜き上げられない(ワタシは基本、ギャフを持たないスタイル←どんなスタイルだ)。
一瞬、前回のバラしが頭に浮かぶ。
すると、ワタシの奮闘に気付いた他の釣人がギャフを持って駆けつけてくれ、間一髪、なんとか水揚げすることができた。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240606/12/arakojp/10/5b/j/o1080081015448092219.jpg?caw=800)
胴長35㌢、重さ1.7㌔のグッドサイズ!
これまでの自己記録が1.4㌔だったので、記録更新ということになる。
「ファッシャー!」と、威嚇するように不気味な声を上げるイカを目の前にして、ワタシはハァハァと息を切らしながら、ワナワナと手の震えが止まらない。
圧倒的な戦慄と興奮。
これが、春アオリの醍醐味である。
しばらくは興奮が収まらなかったが、やっとその波が引いていくと、今度はジワジワと満足感がこみ上げてきた。
いやぁ、良かった・・・
もうあとは、釣れなくてもいいや。
そこからのワタシは明らかに動きが緩慢になり、エギをロストしたり、掛けたイカをバラしたり散々だったが、悔しさは一切なく、その口元には常に穏やかな微笑みが浮かんでいるのであった。
しかし。
リールのドラグが、ギュイーンと不穏な音を響かせ続けている。
慎重に波打ち際まで寄せて、寄せる波の力を利用してなんとか岸に上げる。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240607/12/arakojp/85/c7/j/o1080077715448485116.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240607/12/arakojp/55/49/j/o1080069315448485118.jpg?caw=800)