翌日。
40半ばオッサン、波平の朝食。
波平が今回泊まった宿は、朝夕バイキング形式のいわゆるリゾートチェーンなのだが、食事も温泉も悪くなかった。
さらに、近隣割が効いて定価¥10,000のところ¥5,000割引、さらに地域クーポンが¥2,000付いたので、一泊2食付¥3,000で泊まれたようなものである。
波平、最近小遣いを減らされたので、すごく助かる。
ところで、本日の波平は燃えている。
というのも昨日、アオリイカを釣りに来たつもりが、フェリーに乗ったり伊勢エビを食べたり山に登ったりして、イカ的には不完全燃焼なのである。
そんなわけで波平は本日、離島に渡ることにしたのだ。
鳥羽の離島まで行って、イカが釣れないなんてことはなかろう。
波平、やりますよ!
しかし。
しかも、結構な豪雨。
燃えていた波平に容赦なく雨が降り注ぎ、ジュワッと音を立てる。
うーん。
どうしたものか。
雨の中釣りをするのは、正直楽しくない。
豪雨だし。
やめようかな、と弱気になった時、磯野家のご先祖様(波平とほぼ同じビジュアルのあの人)の声が聞こえる。
「こりゃ波平!ごちゃごちゃ行っとらんで、さっさと行かんかぁっ!」
ひぃーっ、ご先祖様!
で、急いで船に乗り込んだ波平。
やけに豪華だな。
むむッ?
この船は・・・
どうやら波平、急いでいたため、乗る船を間違えてしまったようだ。
そう、この船は観光船エスパーニャクルーズ「エスペランサ号」。
90分かけて、風光明媚な英虞湾をゆっくりと回ってくれる観光クルーズ船である。
当然、イカが待つ離島には行かない。
波平、一生の不覚である。
まさか、船を間違えるとは!
・・・波平、楽しんでないよね?
船はすでに離岸しており、あと90分は陸に戻れないことになる。
せっかく離島でアオリをバンバン釣り上げようと思ってたのに。
なんたる不覚!!
さて。
手ぶらで自宅に帰った波平であるが、さっそくタラちゃんから、
「おじいちゃん、お魚は釣れたでスか〜?」
と、鋭い質問を投げかけられたので、
「タラちゃん、大人でも魚が釣れない日はあるんだよ〜」
とごまかしたものの、
「残念なおじいちゃんでス〜。ピコポコペコポン(タラちゃんが歩く音)。」
と言われてしまい、また髪が薄くなるのを感じたのであった。
おわり。