この物語は、40代半ばに差し掛かり急に老いを感じ始めたおっさんが、迫り来る腰痛の激しい波に、毅然たる態度でダラダラと立ち向かわんとする感動の冒険譚である。


〜これまでのあらすじ〜

突然の激しい腰痛に襲われた、可哀想な40代半ばおっさんのワタシ。

MRI検査を受けるも、やはり様子見という結論に落ち着いてしまう。

果たしてワタシは、この苦難を乗り越えることができるのだろうか!?


MRI検査を受けたものの、再び様子見との診断結果に至ったワタシの腰。

医者に言われた通り様子を見ているが、全く良くなる兆しを見せない。

職場で椅子に座って仕事していると、夕方には座っていられなくなるほどケツが痛くなってくる今日このごろである。


そんなある日。


靴下を履こうとした時のこと。

何となく左足の甲に振れると、何だか違和感を覚える。

むむっ?

何だこれ?


よく触って確かめてみると、左足の甲のど真ん中に、コリコリとした球体のデキモノが確認できる。

むむっ。

球体は直径5㍉程度で、触っても痛くはない。

うーん、いつの間に?


少し前には、こんなコリコリ君は存在しなかったはずである。

すると、ここ数日のうちにコリコリ君はどこかからやってきたと言うのか。

それにしても突然すぎる。

事前に、挨拶の一つくらいあってもいいはずではないか。

全く、無礼なヤツだ。

ワタシの身体に居座ろうと言うのに、「よろしくで〜す」の一言もなく、コリコリと自己主張ばかりするとは。

全く、これだから最近のコリコリは・・・


さて。


このコリコリ君、放っておけば無くなるかなと静観していると、1か月経ってもワタシの足の甲に居座り続けた。

どうも、居心地が良いみたいである。

この頃になると、逆にこのコリコリ君に愛着が湧いてくるようになり、名前を付けたりしてみる。

足の甲に出来たので、コウタロウなんていかがだろう。


しかしこうなると、以前抱いていた不安が再び現実味を帯びて沸き返ってくる。

この腰痛が、何か悪い病気などの前兆なのではないかというアレである。

そこでネットで調べてみると、やはり不安な情報が。

「腰痛が治らず、そのうち身体にシコリが出来たので調べてみると、ガンだった」

というような話。

うーん。


不安と言うものは、一度火が点いてしまうと消すことは難しく、日に日に拡大していくばかりである。

そう言えば、最近微妙に体調が悪いような気がする・・・

うーむ・・・


そうだ!

こんな時は、スーパードクターに相談だ!


ということでやって来た整形外科。

例によって大変忙しそうなスーパードクターに事情を説明すると、ドクターは少し神妙な面持ちになった。

診察室に一筋の緊張が走る。

ワタシは靴下を取って、コウタロウをドクターに見せた。

ドクターはコウタロウをほんの一秒だけ触ると、抑揚のない声で静かに言った。

「・・ングリオンですね。」


???

はじめの部分がよく聞こえなかったが、何ですって?

エヴァンゲリオン?

最後が「リオン」で終わる単語など、ワタシはエヴァンゲリオンくらいしか知らない。

すると、何ですか。

ワタシの足の甲に知らぬうちに、汎用人型決戦兵器が埋め込まれていたということなのだろうか。


うろたえるワタシに、ドクターは続ける。

「別室で説明します。」

別室!?

これは、いよいよアレだ。

実はドクターは国連の非公開組織のお偉いさんか何で、これからワタシは別室において極秘に、汎用人型決戦兵器のパイロットに任命されるのだ。

そうか、そういうことだったのか!


別室に移るとドクターは、すかさず何か最先端ぽい装置をコウタロウに当てた。

モニターに、コウタロウの電子映像みたいなのが映し出される。

ドクターは、静かに言う。

「白くなってるの、分かりますか?」

確かに白い。

これがコウタロウ、いやワタシが搭乗する汎用人型決戦兵器なのだろうか。

ドクターは淡々と続ける。

「これ、『ガングリオン』です。」


ガングリオン?

エヴァンゲリオンじゃなくて?


ドクターはさらに、

「白く映るのは水疱だからで、これがガングリオンの特徴です。」

と説明する。


うーん、エヴァンゲリオンじゃないのか。

何故だか、少し残念な気持ちもする。

いや、しかし待てよ。

よく聞けばガングリオンも、中々強そうな名前じゃないか。

ガンダムとエヴァンゲリオンが合体したみたいで。

普通に、そんな名前の宇宙ロボットシリーズ、ありそうだぞ。

ワタシは恐る恐る、ドクターに聞く。

「で、先生。ワタシはいつからガングリオンの正式パイロットに・・・」


「???」

「!?」

「いや、特に害のあるものではないので、放っておいても大丈夫です。心配しているような、腫瘍とかではありません。」

「・・・・・お騒がせしました。」


帰ってよく調べてみるとガングリオンとは、関節の潤滑油みたいな液体が溜まったもので、ほとんどが良性のものらしい。

新世紀でも機動戦士でもなく、パイロットになれなかったのは少し残念だが、とりあえずは安心した。


しかし、しばらくはワタシの左足の扶養家族となるこのガングリオン、せっかくなので、コウタロウ改め「RX-78-2コウタロウ零号機」と名付けることにした。

長いか。


つづく。