遺作 | バイオリンの先生の日記帳

遺作

何年か前に、関西地区のチェロの先生が、ご病気で亡くなりました。
おいくつだったのか、はっきり分からないのですが、まだ60前後でいらしたと思います。

私はこの先生に、高校時代にスチューデントオーケストラで旧東ドイツに演奏旅行に行ったときに、とてもお世話になりました。(まだ、ベルリンの壁がありましたよ!)

この仕事は80代で現役もたくさんいらっしゃるので、早すぎる死でした。

その後すぐに、松本で毎年恒例のスズキメソード夏期学校が開かれました。
オーディションで選ばれたすばらしい生徒さんたちが、先生方のオケをバックに演奏する「夜のコンサート」で、チェロの代表が、その先生の最後の忘れ形見の女の子でした。

私はビオラパートのトップとして、彼女のボッケリーニのコンチェルトを伴奏したのですが、本当にその先生が丁寧に最後の最後まで教えてきた様子が目に浮かぶ、すばらしい演奏でした。

仲間を失いすっかり沈んでいる他のチェロの先生と、「この仕事は、もし自分がこの世からいなくなっても、こうやって生徒に伝えた演奏や技術が残っていくんだから、すばらしいよね。」と、お話しました。

先生たちは、よくお互いのクラスの発表会を手伝いっこします。
生徒さんの演奏を聴くと、その先生が普段のレッスンで大切にしていることや、指導法が目に浮かび、何よりも生徒さんの弾き方が、先生そっくり!!

子どもたちは、こちらが意図して教える事柄以上に、それ以外の色々な情報をかなり正確にキャッチしていて、驚かされます。
一挙手一投足油断がなりませんね!

私のクラスも、友人の先生に手伝っていただくのですが、「みんな、弾き方がちかちゃんそっくり~!」と言われます。
自分がみても、良く分からないし、そんな風に教えたつもりはないのですが・・・特に、ヒロピとあさみちゃんが似ているらしいです。

生徒さん一人一人は、先生目線で言えば、自分の作品のようなもの。
作品自体も自分で成長する力があるので、本や絵のように、完璧に自分の残したまま後世に伝わるということはありませんが、みんなが楽器を弾き続けていてさえくれれば、脈々と残っていくわけですね。

これからも、心をこめてひとつひとつ大切に作っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。