クッッッッッッッッソ主観まみれ


主な評価基準は

①自己ベスト

②世界選手権・五輪の実績

③他種目の実績

④レースの対応力&レースのバラエティ


当然ながら特に①と②は比重が大きめ







10位:サラ・ヒスー

貴重なケニア&エチオピア以外の長距離世界記録保持者


一時期だが10000mにてゲブレセラシェから世界記録保持者の座を奪い、世界選手権・五輪で銅メダルも獲得した。この時代では珍しい5000mも強いランナーで、こちらはセビリア世界選手権で金メダルの実績がある。


10000mの自己記録も26:38と、今見ても相当な水準なのだが如何せん同時代には後述するゲブレセラシェ、テルガトや同じモロッコでもエルゲルージというレベチがいたので大層な実績を引っ提げながらどうにもマイナー。Googleや国際陸連のホームページ等でも画像が出てこなかった…。





9位:ヨミフ・ケジェルチャ


長距離王国の若きベテラン

18歳から世界の最前線を走り続けており、27歳にしてシニア世界のキャリア10年目と言うベテラン。専ら5000m.10000mの選手だったが、室内1マイルで世界記録を作ったと思ったらハーフマラソン57分台を達成しちゃったりと、かなり幅広い距離を現在進行形でハイレベルにこなす男である。

未だポテンシャル豊富な選手だが、10000mに限って言うとやっぱりアレガウィに軍配が上がる印象。五輪選考会のように好記録で勝ちきるレースもあるが、世界選手権・五輪となると他のエチオピア勢に先着を許す場面もチラホラ。あと、どちらかと言うと5000の方が強い選手だと思う。





8位:ベリフ・アレガウィ


現エチオピア長距離を支える男の1人

特に直近3年は3000m.5000m.10000mで歴代トップ10入りし、10000mはパリ五輪で銀メダルを獲得。ロード10kmでは26:33というとんでもない世界最高記録を作ったりと破竹の勢い。

選手権の強さも折り紙付きで、パリ五輪に象徴されるようにラスト100mの追い込み方はかなり驚異的。負けも多いが必ず上位にはいる安定感も、競争率が特に激しい今のエチオピア勢の共通項をしっかり受け継いでいる。

正直今のエチオピア男子長距離はこれまでに無いくらい選手層が厚く、ベケレ・ゲブレセラシェに至るレベルではないと言うだけでそれを追いかけるレベルが4.5人いる。アレガウィはその中でも特にトラック種目に比重が置かれたタイプと言える。





7位:ポール・テルガト


ケニア長距離界の父と呼ばれる男


10000mで史上初の26:30切りの世界記録を達成し、当時の10000m戦線では極めて異例の5000m12:50切り&3000m7:30切りと言うスピードも携えたランナーだった。世界選手権では95年イェーテボリ~99年セビリア大会と3大会連続で、五輪もアトランタ&シドニーと2大会で銀メダルを獲得している。


不運にもゲブレセラシェと世代丸被りだったばかりにトラックでのタイトルこそ乏しいが、逆にそれ以外のランナーは悉くテルガトの後塵を拝した程彼は強かった。彼の樹立した10000m世界記録も、1度ゲブレセラシェが打ち立てたものを破ったものだったので、1度もゲブレセラシェに勝てなかった訳でも無かった。




またトラックだけでなくロード・クロカンも強く、特にクロカンに関しては、毎年開催とは言え世界選手権5連覇という驚異の実績を持つ。ロードでもハーフマラソン・フルマラソン共に世界記録を樹立しており、フルマラソンは史上初の2時間5分切りを達成。2000年代始め頃はアメリカのハヌーシ&エチオピアのゲブレセラシェとで当時のマラソン界の勢力を三分していた程であった。





6位:ゼルセナイ・タデッセ


エリトリアの英雄


知る人ぞ知る集団走クラッシャーで兎に角自らハイペースを作ってガンガン揺さぶりをかけるレーススタイルが非常に特徴的なランナー。

アテネ五輪とベルリン世界陸上はこの手法で表彰台に立っており、特にベルリン世界陸上はケネニサベケレ以外の名だたる26分台ランナーや世界大会のメダリストを振り落とした。自己ベストも26:37を数えるなど、この自らハイペースを作れる所が最大の強み。


とは言え世代がベケレやシヒネらと被ってしまったばかりに表彰台に立てそうで立てなかったレースの方が多い印象、そういう意味では第2のポールテルガト的な存在とも言える。




ここもテルガト味が強いが、10000mが上述のような感じだった一方でハーフマラソンは桁外れに強かった。


まず当時圧倒的な世界記録だったサムエルワンジルの58:33を10秒更新、その後NIKEがズームXシリーズを開発するまで破られなかった。


世界ハーフは2度の連覇を含めて5回優勝。その他コペンハーゲン、リスボン、グレートノースランと言ったマラソンで言うところのWMMシリーズに匹敵する諸大会にてタイトルを総なめにしてきた。


なんと言うか、吉田沙保里さんがいるから仕方なく階級を上げたらめちゃくちゃ無双しちゃった女子レスラーがいたが、あれの長距離ランナーバージョンがタデッセだと思ってもらえればいいだろうか。




5位:シレン・シヒネ


エチオピアが誇る最強のシルバーコレクター


等と紹介するように世界選手権・五輪では常にと言っても良いほど銀メダルを獲得している。例によって彼もケネニサベケレと言う天才の犠牲者と言うか、その影に隠されてしまった不運な男なのだが、反面ベケレ以外には基本的に一切負けなかった。自己ベストも26:40を切っているし、5000mも12:47を持っており世界選手権銀の実績まである。


ただ、どうにも日本ではマイナーらしい…国際千葉駅伝にも出てたりしたので割と知っている人いそうなものだが…。因みに奥さんは女性版ケネニサベケレとも言うべきティルネシュ・ディババ。




4位:ジョシュア・チェプテゲイ


現10000m世界の絶対王者


5000.10000両方でベケレの世界記録を塗り替え、10000mでは鮮烈なスパートを武器に世界選手権3連覇中。五輪もパリにて悲願の金を獲得して今や死角なし。結構自分からハイペースをどんどん作っていくレースも出来るタイプなのでその意味ではベケレ、タデッセのスタイルも感じる。


ただし、これより先は長距離2種目共に絶対的な強さを持つ選手が顔を揃えており、如何に世界記録保持者とは言え世界陸上・五輪で5000mと兼ねた実績が殆ど無い点は4位と言わざるを得ない。まあその辺はウガンダ陸連の意向が少なからず関係しているので気の毒っちゃ気の毒だが…


因みに彼の持つ5000m.10000mの世界記録は何れもスコア換算で1300点を越えているが、実はトラック長距離種目での1300点越えと、中長距離種目を専門とするする選手で2種目以上で1300点越えの自己ベストを達成した史上初の選手だったりする。




3位:ハイレ:ゲブレセラシェ


アディスアベバが生んだ長距離の神様


記録・強さ・息の長さ・種目の幅広さ

全てに置いて歴代最高クラスの水準と言う、長距離どころか陸上競技全体で見ても有数の偉人。


10000mに置いては世界選手権4連覇、五輪2連覇の実績があり、世界記録も2度更新した実績がある。前述の通りケニア屈指の偉大な10000mランナーだったテルガトを常に破り続けての連覇と言う凄まじい戦績である。他にも5000m、ハーフマラソン、マラソンでも世界記録を更新。ハーフは58分台、マラソンは2時間4分切りを史上初めて達成した。


ベケレ出現まで永らく10000mで時代を席巻し、その後もロードでかなり長い間最前線を走ってきた。遂に老いには勝てなかったが、御歳51歳にして割と最近まで現役だったというとてつもない御仁であった。





2位:モハメド・ファラー


英国史上最高の陸上競技選手(多分)


ランキング10人の中でも自己ベストは1番遅いが逆に言えば非の打ち所はそれだけ。世界選手権・五輪で2大会連続長距離2冠を達成し、世界選手権は5000m10000m共に3連覇。この2種目の強さは異常と言うレベルだった。


多分ラスト1周のスプリント力は歴代最強。しかもそのスパートを確実に決めるための位置取りとスプリットの刻み方がとてつもなく上手い。かといって自己ベストを上回るようなハイペースを選手権で発動されてもしっかり余裕を以て付いていき、お決まりのスパートを炸裂させて勝つ。このファラーのスパートの安心感は本当に凄かった。


自己ベストも記録更新を狙う機会が全く無かっただけで、ロンドン世界選手権の26:49というペースで自分のレースをした走力や1500m3:28というスピードなら世界記録近くは普通に狙えたと思っている。何より皇帝ゲブレセラシェがそう太鼓判を押すのだからきっと間違いない。





1位:ケネニサ・ベケレ



映えある1位はやはりこの男

長距離2種目世界記録に10000mは世界選手権4連覇&五輪2連覇。こんなのは序の口で彼の並外れた強さを示すレースは数々ある

まず伝説の発祥地となったパリ世界選手権10000mでは、当時誰も食い下がることすら出来なかったゲブレセラシェのラストスパートに唯一付いていき、最後はこれを逆転して初出場ながら初優勝。大会記録も一気に26:49まで引き上げた。
大阪世界選手権では前年に最愛の女性を亡くした悲しみから殆ど練習ができず、レース当日も腹痛に悩まされるという劣悪なコンディションだった。そのためレース中盤に先頭集団から脱落するというまさかの展開に見舞われたのだが…なんと終盤ここからまさかの集団復帰を果たし、最後はお決まりのスパートを決めて圧勝した。
ベルリン世界選手権では前述のタデッセが2000m過ぎから世界記録と同じという驚異のハイペースを作り、メダリスト経験を持つ選手や名だたる26分台が次々と脱落する中で唯一最後までこれに付き、最後はやっぱりスパートを決めて圧勝。この時はラスト1周54秒台だった。

他にも北京五輪の5000mでは3000m以降自ら世界記録を上回るイカれたペースでキプチョゲ以外の優勝候補を全員脱落させ、そのキプチョゲもラスト1周54秒と言うスプリットで瞬く間に千切っていった。こんな感じで2003年から2009年のベケレは本当に圧勝しかしていない。

10000mの世界記録もチェプテゲイに更新こそされたが、あちらが最後まで仕事をしたペースメーカーに加えて最新のライトぺーサーまで完備していたのに対し、ベケレの場合は『ぺーサーが遅すぎるから』と言って4000m過ぎからペースメーカーを振り切り、単独走で世界記録を作った。ぶっちゃけぺーサーがちゃんと機能しただけで26:10は普通に切れてたと思う。


そんな感じで5000.10000は無双しかしてないが、クロスカントリーでもちゃんと強くて世界クロカン5連覇の実績がある。またトラックの最前線を退いてからはマラソンでも度々世界記録を脅かす程のビッグタイムでベルリンマラソンで大勝を納めるなど、40を越えてなお伝説的な存在として活躍し続けている。最早息の長さでもゲブレセラシェを越えそう。