前回までのあらすじ

 

隣の吉Dさんは推定歳60歳くらいの独身女性

ちょっと変わった雰囲気のお方

ある台風の日

うちの排水口の詰まりのことで殴り込み?に来られる

 

吉Dさんは納得した様子でありつつも

憮然とした表情で帰って行かれた

 

しばらくしてベランダでカタカタ音がするので覗いてみたら

吉Dさんが排水溝にゴミ流れ防止のネットを取り付けようとしている

「できますか~」と声を掛けたら

「これでいいんかな」と園芸用のネットを見せてくる

「そうそう」と言ったら、なぜか一枚くださった(お礼?お詫び?)

 

どうしたらいいのかわからないみたいだったので

排水溝の幅に合うようネットを湾曲させて、下に隙間のないように置くと、

しっかり自立するしいいんじゃないですかね~とアドバイス

 

なかなか素直でかわいいところあるじゃんとお慈悲の目で見守る私

ちょっととっつきにくいけど、仲良くやっていけそうな感じ

思い切って言ってよかった~

 

ところが数日後!

うちのベランダの、隣との境界から2~30cmほどのところに

園芸用のネットがポンと置かれていた

ん?なんだ、これ

 

どっかから飛んできた?

上の階の人が落とした?

いやいやいやいやいやいや

これ、どう見ても隣の吉Dさんが使ってる園芸用ネットやん

 

ベランダの緊急避難用ボードの間から隣を伺ってみるも

うまく見えない

 

はは~ん♪

吉Dさんったら

水を流した勢いで、自分とこのゴミ取りネットをこっちまで流してしまったんだな

それに気が付いてないのか

気が付いてたとしても、結構私のところまで流れてしまったものだから

あきらめたのかな

 

そう思った私は

そうっとネットを吉Dさんの方へ押しやった

 

次の日ベランダに出てみた私は驚愕

またやって来てる!

ネットがまた私のところへやって来てる!

 

しかも今度は隣から1mくらい離れたところまでやって来てる

もしかしたら吉Dさん、ベランダの境界をまたいで置きに来たんではないかと思うくらい

 

いやいやいやいやいやいやいや

そんなわけない

何かの偶然でまた流れてきたのかもしれぬ

考えにくいけど

で、前よりもちょっと向こうへ押し込んでみる

 

次の日

またいる!阿鼻叫喚!

感情が「不思議」→「不気味」→「怒り」へと進化してきた

絶対わざとやってるでしょ、吉Dさん

隣同士、何にも言わずにネットを押し込みあうって変でしょ

なんか意味があってやってるのなら言ってみなさいよ!

 

私はネットを掴むと隣へと走った

 

~to be continued~

 

 

 

 

 

 

隣の吉Dさんは一人暮らし

 

私より年配で(違ってたらすまぬ!)

婚姻歴はなし(これも想像!)

オシャレなんて関心ないですわ~と(言いそうな感じがしただけ)

化粧っ気ひとつない素朴~なご尊顔で(化粧してたらごめん!)

だけどまつ毛には特殊な思いがあるようで(知らんけど)

まつエクは一本たりともばっちり欠かさぬという

なかなか攻めてる感もある不思議~な人

 

引っ越しの挨拶に行ったときの印象は

笑顔ひとつなくて、ぶっちゃけ怖いんですけど

だけど家の中へ招き入れようとしてくれるようなフレンドリー感もある(お断りしたけど)

「ちょっと変わった人?」

 

だけど変わった人ならここらへんにはゴマンといる

だから気にしないと思ってた

 

ある台風の日

突如ピンポーン♪とやってきて

「お宅のベランダの排水口、詰まってるでしょ」

 

私は驚いた

その毅然とした口調といい

表情ひとつ変えない強面といい

殴り込みに来られたのかとビビったのです

 

そうなんです

確かにベランダの排水口は詰まり気味なんです

そろそろ掃除しとかないとな~と思いつつ

大量発生したヤスデを大量殺戮した残骸がひしめき合っているだけでなく

それらが溜まった水でいい感じにふやけてて

これを手でとるには途中で失神しそうだったので

100均でゴミばさみを購入してから掃除しようと今日まできてしまっていたのでした

 

そしてね

なぜかこのマンションのベランダの排水口は

一つのものを隣と共同で使用するようになっていて

それが二軒の間ではなく、私のところについている、という

隣の排水が私のところにやってくる、という

吉Dさんとおなじくらいうちのマンションは変なんです

 

さらに言わせてもらうとね

身に覚えのない土やら小さな葉っぱやらが頻繁に隣、つまり吉Dさんちから流れてきてるんです

そりゃ詰まるわな、って話なんです

 

迫力に圧倒され、返答に困っている私と

その後何も言葉を発さない吉Dさん

 

もしかしてこの方、いわゆる世間で言うところのヤバい人?

もしかして引っ越してきてはいけない所に引っ越してきた?

あーそう言えば前の住人さん、入居してから引越しするの早すぎじゃない?

それはもしかして吉Dさんと何かあったのか!


普段使わない頭の中がぐるぐる回って私は混乱していた

しかも何、この状況

何も言わず見つめあってるんですけど


と、その時

 「私、今日は掃除させてもらおうかなと思ってなぁ」

ゆ~っくり、言い含めるように話す吉Dさんにまた戦慄する

しかも彼女にはまったくそんな気はないことを私は知っている

だって掃除道具持たずに、掃除しにきたって言う?

うちの掃除道具貸してってこと?嫌やし

 

「嫌だ〜吉Dさんたら(笑)

いいですよ、私今からやるので」

 

私はもう一度吉Dさんの顔をまじまじと見た

この方は怒ってるんだろうか?

ここはまず謝るところなのだろうか?

引っ越して早々に気まずくなるのもなんか嫌

できれば当たり障りなく、それなりに仲良くしていたい

お隣さんなんだもの

 

いや、でも、ゴミ流してくるのは吉Dさんなんだから

一方的に私が謝るのもなんだかな~

折衷案として

ちょっと謝るけど、ちょっと文句言おうと思った

 

掃除が行き届かなくて流れにくくなってしまったのは申し訳なかった

排水口が共通である以上、吉Dさんのところから流れてくるのは仕方ないことですけど、

土とか葉っぱとか詰まる要因のあるものはなるべく流さないようにしてくださいね♡

 

角が立たないようふんわり言った(つもり)

吉Dさんは表情ひとつ変えずに

「そんなん、どうしたらいいん?」

 

これにもちょっと驚いた私は

自分で考えろや、とは言わず

「そうですね~、例えば園芸用の大きめの硬いネットを、ベランダの境目の排水溝に立て掛けるのはどうでしょう」

とっさに考えたとはいえ、我ながら名案

 

「そうしたら大きいゴミは引っかかりますので、

吉Dさんは引っかかった自分とこのゴミだけ取り除いてくれたらいいです

もちろん水やら取り除けないようなものは流してくれて結構ですからね」

 

「ネット?そんなんないし」

いや、ないわけないでしょ?

あなたベランダで土まみれになって園芸なさってるでしょ?

とは言わず、

 

「吉Dさん、ほら、ポットの底に敷くネットですよ

無いんだったらうちのあげますよ」

と言ったら

きっぱりと拒否の表情をされて「あるわ!」

(あるんかい!)

 

吉Dさんと私の排水口対決は次回に続くのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

私は「なめくじ」

ほぼ間違いありません

 

なんの生産性もなく

人の役に立つこともなく

ただ時間が通り過ぎるのを見送っているばかり

 

ときどき酸欠になって外を歩くと

忙しそうに会社へ向かう人や

活気あふれるお店を切り盛りしているアルバイト店員や

掃除をしてくれているおじいさんや

 

ああ

なんてみんなすごい人たちばかりなんだろうと思う

働いていることが、こんなにすごいことだと気付かなかった

 

そして私はただのなめくじ

今日も一日生きています

洗濯洗剤のコマーシャルの

「大丈夫、あなたは悪くない」に励まされながら