美しく年齢を重ねたいのらねこです

アラフォーのリアルな日常を綴ります花

 

前回の話はこちら↓↓



※今回のブログは坂元裕二著「初恋と不倫」が良すぎて書いたオマージュ作品(?)です。




初恋と不倫

作:のらねこ
 
私はもう立派な中年で、性別は女だから、どこからどう見てもいい年をした中年女性だと思う。
 
思うだけで、実際に私という人間に客観的に出会ったことはないし、これからも道で偶然に自分とすれ違うとかバスで自分の隣の席に座るとかカフェでアルバイトをしている自分に接客してもらうことなんてないのだから、本当はどう見えるのかなんてことはきっとずっとわからないはずだ。
 
それは別にいいとして。
 
最近久しぶりに実家に帰ったものだから、実家の2階の上京するまで自分が使っていた部屋から見ていた景色を、夜にふと思い出してしまった。
 
実家はずいぶん田舎で、山を切り開いたところに建てた新興住宅地みたいなところだ。
2階の窓から見える景色は田んぼと低い山と、貯水池。ずっと向こうには遠すぎて見えないけれど大きな川が流れている。晴れている日も雨の日も曇りの日もそんなに変化しない。額縁にでも入ったように静かな景色だ。
 
田舎は10代の若者が過ごすには退屈過ぎてつらかった。少なくとも私はそこで思春期をこじらせていたし、自分が自分であることを疎ましく思い、全然何一つとして足りないものはないのに、いつも何かが不足していると焦り、今思えばとても馬鹿馬鹿しいけれど当時の自分の言葉を借りて言えば絶望に近い何かを感じていた。焦燥感といってもいいのかもしれない。多くの若者が感じる自分が何者にもなれないであろうという確信とそれを変えるほどの勇気も意欲も持ち合わせていないことをそろそろ認めなければならない焦燥感。
 
私はとくに飽きっぽくて理屈っぽくて頭でっかちで、比較的卑屈な傾向があったし、考えすぎるゆえに人と関わることも苦手だったから、当然の帰結として一人で過ごす時間が多かった。
 
今思い返してみても、当時の自分には戻りたくないと強く思う。
 
学校の登下校のときに、当時好きだったA君にどきどきしながらおはようと声をかける嬉しさを差し引いたとしても、断然今のほうがいい。先日10年ぶりに中学生時代の友人に会ったときに、「実はA君と付き合っていたんだよね。合わなくて、結局別れちゃったけど。」と言われるまでA君のことなど忘れていたのだし。
 
しかしA君はおそらく私が初めて告白のようなものをした相手だったし、おそらく初めてフラれた相手でもあった。
好きになった理由とかどこか好きだとかは覚えていない。理由はなかったんだと思う。
 
そんな彼は今は離婚して1人暮らしをしていると、中学生時代の友人でA君の元彼女である目の前の中年女性は言った。
 
私はこれまでに浮気も不倫もしたことがない。
 
そのことを誇りに思っている。
 
深く考えたことはないけれど、誇りに思っている理由は自分にとっても自分の配偶者にとっても不貞行為がないことはたぶんよいことだと思っているからだと思う。でも本当にそうなのかしら。
 
たとえば人を愛するということを誰かに説明するのはすごく難しいことなんじゃないか。それと同じくらい浮気や不倫をするということも誰かに説明するのはすごく難しいことなんじゃないかと思ったのだ。
 
私という中年女性が同じ年の中年男性である元同級生のA君に会ってみたいような会ってみたくないような気持ちがしたのは、自分としては全然浮気や不倫などとは関係がないと思うけれど、実際に自分という人間と結婚したことはないのだから、本当はどう見えるのかなんてわかりようがない。
 
ただ当時ぼんやりと眺めていた実家の2階の窓からの景色を、距離的にも時間的にもずいぶん離れたところから思い出してみるのは、たまになら許されることだと思う。あまり変わり映えのない景色と本棚に並んでいた小説と、驚くほど広い空間のなかに建っている一軒家の狭い一室に住んでいた、自分の小ささにおびえている私。

たまにほんの少しだけ思い出すくらいなら、きっと許されると思う。
 
 
おわり
 


いかがでしたでしょうか?

今回は初めて超短編的なブログを書いてみました飛び出すハート
 
著名人がおすすめしていた坂元裕二著「往復書簡 初恋と不倫」を読んで感化されました。(ほんっとに単純笑い泣き


大好きなドラマ「大豆田とわ子と3人の元夫」「最高の離婚」「カルテット」の脚本家ということで坂元裕二さんを知ったのですが、小説を読むのは初めて。脚本家だし…なんて思ってあまり期待せずに読んだら、もう天才でした真顔

 


私が天才だなって思う方はたくさんいるのですが、坂元裕二さんもそのお一人です流れ星

 

 

 

 

↓初恋といえばツルゲーネフの初恋も衝撃でした。

残念ながらどの翻訳だったか忘れたけどアセアセ

 

 

 

それにしても「初恋と不倫」ってすごいタイトル爆笑

 

タイトルは強烈ですが、中身は素晴らしく詩的で瑞々しくて美しくて、ややグロテスクかもしれない人間味に彩られておりますキラキラ


3連休もそろそろ終わり流れ星

明日からまた頑張りますグー



↓結構前に描いた絵気づき



 

それではまた~花

 

 

 

 

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