とけいのじかん4
時計マニアあるある病
『この惑星のマニアという人種は、実に奇妙な生き物で、
合理的なのか非合理的なのか全く分からない。
他の動植物の場合、一見不可思議に見える生態にも、
相応の理由があり、それらは地道な観察によって明らかにすることができる。
その緻密な世界に神の御業を垣間見ることもまれではない。
しかし上記の生物は、観察すればするほど理解に苦しむのである。』
他所の天体からやってきた異星人はきっとそう思うに違いない。
事実、マニアである当の本人ですら、自分の異常なまでの偏愛と性癖を
他者に合理的な説明をすることは不可能であると
認識しているのではないだろうか。
一例を御紹介しよう。
かく言う私も時計マニアの端くれである。
敢えて端くれと謙遜するのは、この世の中に
群を抜く達人と言われるような存在が必ずいるからである。
うっかり分かったようなことを書いて得意になっていると、
足をすくわれて恥をかいてしまうかもしれない。
さてそんな不肖時計マニアの私は散歩が趣味でもある。
こちらは至って健全なもので、ただ近所をてくてく歩く程度に過ぎない。
時々、写真を撮ったりもする。

私は鉄道マニアではないけれどローカルな鉄道には旅情を感じる。

「遠い世界に~♪ 旅に出ようか~♬」という気持ちになる。
でも猫型人間なので本当はサッパリ出かけない。

閑話休題
その散歩コースに小奇麗な昭和の風情が残る家がある。
庭にはテニスコートの四分の一くらいの小さな畑があって、
家庭菜園を楽しんでいるようだ。
その畑わきの車庫に何故か掛け時計がある。

きっと畑仕事をしながら時間を確認するためなのだろう。
ところが、この掛け時計の時刻が微妙に狂っているのだ。
今日も5分は遅れている。

私は普段から腕時計を身に着けて歩いているので、
ついつい他所の時計も確認してしまうクセがある。

校舎の正面に取り付けられている時計なんかも見ているが、
あの手の公共施設の時計はだいたい合っているものだ。
一方では、こうして狂っている時計を時々目にすることもよくある。
先日、健康診断に行った病院の掛け時計はどれも数分狂っていた。
いっそ完全に止まっているか、数時間も狂っているならあきらめもつく。
1~2分なら敢えて直すまでもないだろう。
私は機械式時計を愛好しているから、それくらいは許容範囲だ。
しかし、中途半端に5分とか10分狂っていると、なんだか許せない。
ちゃんと時刻を合わせたくなる。
この車庫の掛け時計も通りかかる度に気になって仕方がない。
いっそのこと早朝にでも、こっそり合わせに入ろうかと思うこともある。
もちろんそれは住居不法侵入という罪になる。
それなら勇気を出して、このお宅を訪問し
ちゃんと許しをもらってから合わせるべきだろうか。
いやいや、こんな御時世である。
きっと変な宗教か押し売りの類だろうと、
かえって怪しまれるに違いない。
実に悩ましい。
悩ましくはあるが他所の時計だから、やっぱり大きなお世話だろうか。
それとなく住人を見つけて、人の良さそうな感じの老夫婦だったら
声をかけてみようかと考えているのだが、
何年も同じコースを歩いているのに姿を見かけたことがない。
家の窓にはレースのカーテンがきっちりとかけられていて、
中をうかがい知ることもできない。
どうにも、もどかしい。
しかし、
傍から見たら相当怪しい奴だろう。
空き巣と間違われかねない。
本当に警察を呼ばれても困るので、
不肖時計マニアは今日も今日とてもどかしさを感じながら、
通り過ぎざるを得なかったのである。
どうせ、見えるところに時計をかけるなら、きちんと合わせて欲しい。
きっと時計マニアの方なら一度ならず似たような経験をしているだろうし、
この私の切なる願いをご理解いただけるものと信じている。
帰ってきたユミさん
現在、暇にまかせて怒涛の“火の七日間”更新に挑戦中です。
(^^ゞ
