とけいのじかん2
自動巻きとカットガラスとカツ丼
ほんの少し前まで私は腕時計に全く興味が無かった。
時計と言えば、セイコーが90年代に復刻した
機械式シリーズの懐中時計を長く愛用していた。
ロレックスとかオメガというようなブランド名くらいは知っていたが、
たぶん、どれもクォーツだろうと思っていたくらいだ。
何度か時計雑誌を手にしてみたこともあるが、
「えらく高い腕時計だな~」と呆れはしても
それ以上に興味は持たなかった。
それが、ふとしたきっかけで腕時計にハマってしまい現在に至る。
その後、時計雑誌や専門書なんかを読むようになって初めて、
有名で高価なブランド腕時計のほとんどが自動巻きだと知った。
それは、ちょっとしたカルチャーショックだった。
「ああっ!
昔、オヤジたちがシャカシャカ振りながら使ってたアレかぁ!!」
と一人声をあげそうになったくらいだ。
なんだか急に懐かしく思い出したし、
それをきっかけに機械式腕時計に親近感まで持つようになった。
その時、何故か自動巻きの腕時計と一緒にカツ丼を思い出した。
きっと、当時、オヤジが身に着けていたカットガラスの腕時計と、
その頃ときどき連れて行ってもらった食堂のカツ丼が
セットになって記憶されていたのだろう。
確かに、あの店のカツ丼は美味かった。
とき卵はふわふわで、ころもはサクッと歯ざわりがよく、
分厚い肉はジューシーで、その下に熱々の粒のたった白いご飯が
ドンッ!と盛られていた。
それらの食材が甘辛い割下と絡みあって絶妙な味わいだった。
今思い出してもヨダレが出そうだ。
あの頑固で無口な親爺さんの食堂は
当の昔に無くなってしまったが、
幸いこの街にも古い昭和の食堂が何件かまだ残っているので
今でもふらっと出掛けてみる。
なんだか無性にカツ丼が食べたくなる時があるからだ。
お供の腕時計は、もちろんカットガラスの自動巻きだ。

あの頃、オヤジが身に着けていたのは多分、
セイコーのロードマチックあたりだと思うが、
このオリエントのジャガーフォーカスも
当時の風情を充分、今に伝えてくれている。
もちろん、スイス メイドの腕時計だって魅力的だ。
今時、腕時計なんて誰に気兼ねすることなく
一番、気に入ったのを手に入れて身に着けていればいいだろう。
腕時計そのものが必需品の座から陥落し、
趣味品以外の何物でもない時代になって久しいのだから。
でも私にとっては、
自動巻きと言えば、やっぱりカツ丼なのである。
つまり昭和の国産なのだ。
ということで、お腹がすいたので早速でかけた。
れれれっ、これはカツ丼というよりもカツ重ではないかしらん?
まあ、細かいことは気にしても仕方ない。
美味しければ問題なし。

プールサイドのユミさんも地道に続く
