こんにちは。公認心理師の石川美樹です。

今回は、心理セラピストさん向けに、妄想性パーソナリティー障害(妄想気味)のクライアントへの、私なりのアプローチをご紹介しようと思います。

特に、私独自の方法ではないとは思いますが、何かお役に立てばいいかなと思って書いてみます。

まず「妄想性パーソナリティー障害」とはなんぞや?

MSDマニュアル家庭版から抜粋

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妄想性パーソナリティ障害は、他者の動機を敵意や有害性のあるものと解釈する、他者に対する根拠のない不信や疑いの広汎なパターンを特徴とします。
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例えば、
職場で自分より社歴の長い先輩が「何かあったらお仕事手伝いますよ」と言ってくれたことに対し、
「私がやっているプロジェクトを奪って、私の昇進を阻止しようとしてるんだ」とか、
「手伝ってくれた仕事をわざと間違えて、私のせいにして、私の信用を落とそうとしてるんだ」

 

と、相手の言動や行動を敵意や有害性のあるものとして解釈するくせがあり、それが過度になってしまうと、人を信じられなくなるので、人間関係をうまく構築できなかったり、孤独感に陥ってしまったり、感情の起伏が激しくなったりと、日常生活に不具合を起こしてしまいます。ここまでくると病院では《障害》と診断されることもあります。

心理セラピストをやっていると、「妄想性パーソナリティー障害」と診断されてはいませんが、生きづらさのお話の中に、あれ?これ本当にそうなのかな?という妄想的なお話が多く出てくる方がいらっしゃいます。

先ほど例を挙げた、「何かあったらお仕事手伝いますよ」という言動に対して、妄想気味な解釈をしてしまう●さんは、先輩に対して、なぜそんなことを言ってくるのかを、

 

「私がやっているプロジェクトを奪って、私の昇進を阻止しようとしてるんだ」とか、
「手伝ってくれた仕事をわざと間違えて、私のせいにして、私の信用を落とそうとしてるんだ」と悪意があってそうるんだと解釈しています。

このようなクライアントさんに対して、私はいきなりその根拠を尋ねるような、

「どうして、手伝いますよ」という一見優しそうな発言が、「●さんのプロジェクトを奪って阻止しようとしていることがわかるの?」

 

のような、認知の歪みを紐解くような質問はしません。
クライアントさんは、引き続き、妄想と思われるよう解釈で、

「私が信用を落とされて悔しがっている姿を見て喜ぶのが好きな人なんです」

と、先輩は悪意の根拠を持っている人なんだと言わんばかりの回答が続々と続いていくからです。

私は、このような、妄想性パーソナリティー障害や、それに近いクライアントさんがいらっしゃた場合、

まず最初は、
1. とことん、妄想だろうがそのクライアントさんの今の頭の中の現実につきあってあげます。

「ヘぇ、そんなにひどい先輩がいるんだ。後輩が悔しがる姿たを見て喜ぶのが趣味ねぇ、、、。でも、●さんは、そんなことされたらめっちゃ嫌だよね。不快だよね。悔しいよね」

 

まず最初はこんな感じです。

妄想性パーソナリティー障害を抱えている方の多くは、過去に辛い体験をされており、その辛い体験を2度と味わいたくないという思いから、他者の動機を敵意や有害性のあるものと事前に解釈することで、自分を守る癖をつけてしまっているのです。
ですから、まずは、クライアントさんの妄想にとことん付き合って、ラポールをきちんと形成し、

その後に、過去のトラウマを引き出していきます。

2. 「●さんは、この先輩と同じように、過去にも同じように悪意を持って貶められたような経験をしたことあるの?」と、お聞きすると、ほぼ、

「はい、小学校の時に特になんの理由もなく仲間外れにされてました」とか、
「父が私の大好物のクレープを食べに連れて言ってくれるって約束したのに、内緒で、私抜きで妹と二人で行って、それが私にバレて、私が悔しがっている姿を見て、父と妹が面白がって笑っていました」

 

のような、過去の辛い経験をお話しし出します。

 

クライアントさんは、このような辛い経験から自分を守るために、小さい子供ながらに必死に編み出したのが、
「人なんて、優しそうに見えても、所詮は悪意を持って私に接するんだ」という認知のメガネを持ち続けるとこ。
そのメガネが自分を守ってくれていると無意識下で思っているのです。

ここを引き出した後は、現在の悩みの先輩のお話より、過去の虐められた経験や、父との約束クレープ事件の話をじっくりメインにお聞きする方が、クライアントさんが改善していくスピードが違ってくるような気がしてます。(もちろん、私の経験からの話です)

妄想性パーソナリティー障害や、それに近いクライアントさんは、
妄想がどんどん続いてキリがなくなってくるので、1番目の、その妄想にとことん付き合ってあげることをすると、なかなか好転に向かわないのでは??という焦りから、セラピス側がつい「その考え方は妄想だよ」ということを気づかせてあげる方向へ持っていきたくなるのですが、
私の経験からすると、まずはとことん妄想に付き合ってあげて、ラポールの構築することがとても大切です。

ラポールがしっかりしてくると、クライアントさんに、認知を変えてみてもいいのかな??という、ちょっとした心の余裕という隙間が見えてきてきます。
その時に、スーッと、過去のトラウマのお話を聞いてあげるのがコツかな〜と、あくまでも、これは私の経験ですが、もし新米セラピストさんなどにお役に立てればと思います。

いかがでしたか?
 

 

※このブログの管理人である、石川美樹は、私が長年使っている心理テクニックや22年の経験を、セラピストの資格を持っている方向けにスキルアップ技術としてお伝えする講座を開催していましたが、現在、私の体調不良により、一般公募はしておりません。
ただ、どうしても、学んでみたいという方には、個別に対応していますので、お問合せがありましたら、ぜひ、気軽問い合わせてください。